電子書籍ビジネスの真相

「緊デジ」問題を読み解く11の疑問(前編)--“100万点電子化”という妄想

林 智彦(朝日新聞社デジタル本部)2015年10月13日 08時30分
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[画像:西田宗千佳氏「「出版デジタル機構」は日本の電子書籍を救うのか<上>」より、西田氏の許可を得て使用]

はじめに

 こんにちは、林です。10月5日に公開した「電子書籍のスキャンダル--経産省「緊デジゲート」がはじけたようです」が、思いのほか好評なようです。



 ネットの著名人に言及していただき、光栄な限りですが、他方、「いままでの報道の紹介ばかりで、何が問題なのかちゃんと指摘してないじゃないか」という批判もいただきました。

 一方、「緊デジ」事業を実施したJPO(日本出版インフラセンター)は、10月5日に記者会見を開き、制作した電子書籍について、配信状況を調査し、10月中に結果を公表すると発表しました。

“JPOの永井祥一専務理事は「書籍の配信は緊急電子化事業の必要条件に含まれていないが、検査院の指摘を真摯(しんし)に受け止めて配信の実態をつかむため、出版社にヒアリング調査している。同時に、事業の成果と課題についても調べたい」と述べた。”

 いままでできなかった調査が、一カ月弱で本当にできるのか、というか、なぜ今までしなかったのかがまず疑問ですが、今回は、読者の要望に応えて、復興予算を投じたこのプロジェクトの「何がどう問題なのか」について、前回より深く掘り下げてみます。

11の疑問を図示してみる

 2012~2013年に実施された事業が、なぜいまだに尾を引いているのか。そもそも、この事業が、非常に「わかりにくい」ことも、一因としてあると思います。

 国の補助金と民間の資金を組み合わせた官民合同事業であること。事業目的が、震災復興と電子書籍振興など、これまた複数の要素の組み合わせであること。さらに、紙の書籍を電子書籍にする、という点で、紙の出版と電子の出版という2つのテクノロジ、2つの業界をまたいでいること。前回指摘したように、事業主体のJPOだけでなく、そこにデジタル機構、実務を担うパブリッシングリンクという会社までからむ上、そもそも電子書籍自体がわかりにくい。事業をやる方もそうですが、外から検証や批判をする方も、頭がこんがらがるのも仕方ありません。

 そこで今回は、これまで出されてきた疑問を、11のポイントにわかりやすく整理しなおしてみます。事態の正確な理解がないと、問題の根本的な解決はいつまでも望み薄だと考えるからです。

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