2006年1月、そんなBlendtecにジョージ・ライト氏がマーケティング部の初代部長として採用される。ライト氏はすぐに次のことに気付いた。
“Blendtecには傑出した製品が揃っている。しかし、Blendtecというブランド名を知っている人はほとんどいない。ブランディングが弱いのでオンラインでの売上も弱い。”
どうすれば一般の消費者にBlendtecの製品の価値を効果的に伝えられるかで頭を悩ませていたライト氏。ある日製品開発ラボの近くを通りかかると、なぜか木くずがやたらと散らかっていることに気がつく。
キッチン用家電製品の開発に材木を削る必要はないはずだと怪訝に思うと、ラボの中では何と社長のディクソン氏が製品に新たに加えた改良の効果を確かめるために2x2材を放り込んでブレンダーを回転させている最中だった。
古株の従業員たちが「ここではごく普通のことだよ。社長はいつもこうしてテストするんだ」と説明してくれたのだが、新入りのライト氏はその光景に驚かずにいられなかった。
この驚きからライト氏は、新たに発売する消費者向けモデル「Total Blender」のマーケティングのためのアイデアを得た。
ライト氏が思いついたアイデアは、ディクソン氏が普通ならば絶対にブレンダーにかけない品物をブレンダーに投入して、ブレンドできるかを実験する様子を動画で撮影し、公開することだった。
2006年10月にアップされた3つの動画では、実験材料として「ビー玉50個」「熊手の柄」「マクドナルドのエキストラ・バリュー・ミールのセット」が使われている。
「Will it blend? That is the question.(ブレンドできるか? それが問題だ)」というディクソン氏の台詞に続き、軽快なテーマ曲が流れ、タイトルが表示される。ディクソン氏が実験材料を紹介した後、「Do not try this at home!(家で真似をしないでね)」という警告が表示され、実験が始まる。
ブレンダーのスイッチを入れ、しばしの格闘後、ブレンドが無事完了。ディクソン氏のドヤ顔と「YES, IT BLENDS!(ええ、ブレンドできる!)」の文字と粉砕された材料を映して、1分少々の動画は終了する。
まだ使える品物を容赦なく粉砕するというのは昨今のリサイクルブームに逆行する行為だ。PTAから顰蹙(ひんしゅく)を買いそうだが、人間には破壊本能がある。ディクソン氏のキャラクターもあって、最初の5作を発表するとあっという間にクチコミで評判が伝わり、5日間で再生回数が合計600万回を超えるバイラル動画となった。
上の動画は8年前にアップされたものだが、いまも再生回数は伸びている。コメント欄には次のような投稿も見られ、商品の売上に貢献していることが分かる。
「2011年にこのブレンダーを税込で438ドルで購入した」
「ブレンドできた?」
「信じられないほどね。生のトマトが文字通りトマトスープになる。ジュースまではいかないけれど、種や茎が混じっていても、完璧に滑らかなスープができあがるよ」
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