シャープ、最終赤字339億円に--否定から一転液晶テレビの分社化も視野 - (page 2)

CCD、CMOSイメージセンサが大幅な伸び、デジタル家電は低迷続く

  • 部門別売上高

 部門別業績は、プロダクトビジネスの売上高が前年同期比20.0%減の3194億円、営業損失は前年同期の137億円の黒字から、88億円の赤字に転落した。プロダクトビジネスのうち、コンシューマーエレクトロニクスの売上高が19.3%減の2019億円、営業損失が前年同期の57億円の黒字から、117億円の赤字。また、コンシューマーエレクトロニクスのうち、デジタル情報家電は売上高が28.1%減の703億円、営業損失は前年同期の53億円の赤字から赤字幅が拡大して173億円の赤字。通信の売上高は18.9%減の568億円、営業利益は37.8%減の49億円。健康・環境は売上高が9.0%減の747億円、営業利益は77.4%減の7億円となった。

 「通信、健康・環境が黒字を確保したものの、デジタル情報家電では、欧州で液晶テレビをライセンスビジネスに移行するなどの構造改革を前倒ししたこと、米州における競争激化と中国における市況低迷により営業赤字が拡大したことで、コンシューマーエレクトロニクス全体では赤字となった。通信では「エモパー」などの投入を計画。健康・環境ではASEANでのローカルフィット商品の投入と営業体制を強化。猛暑により、国内におけるエアコンの伸長にも期待できる。ユーザー視点で、家電と通信を融合した商品を創出し、特徴技術を生かし、早期の収益改善に取り組む」とした。なお、「液晶テレビ事業の中国市場からの販売、生産の撤退予定はない」とした。

 液晶テレビの売上高は前年同期比25.2%減の641億円、販売台数は18.5%減の141万台。携帯電話の売上高は11.2%減の441億円、販売台数は17.9%減の101万台となった。

 エネルギーソリューションの売上高は46.6%減の368億円、営業損失は前年の1億円の黒字から39億円の赤字へと転落。ビジネスソリューションの売上高は0.8%増の806億円、営業利益は11.9%減の68億円となった。

 「エネルギーソリューションは、国内市場における住宅用、産業用需要に加えて、米国太陽光発電開発子会社の売却や、ポリシリコン価格の下落による、長期契約との単価差の22億円を追加引き当て処理したことが影響。ビジネスソリューションは、海外向けカラー複合機の伸長が寄与。今後は、大型ディスプレイと複合機、タブレット端末を核としたオフィスソリューシーンの展開強化を図る」という。

 一方、デバイスビジネスの売上高が前年同期比20.2%増の3196億円、営業損失は前年同期の13億円の赤字から、赤字幅が拡大して108億円の赤字となった。そのうち、電子デバイスの売上高が2.2倍となる1317億円、営業利益が前年同期の35億円の赤字から、28億円の黒字に転換した。ディスプレイデバイスの売上高は9.2%減の1878億円、営業損失は前年同期の21億円の黒字から、137億円の赤字に転落した。

 CCD、CMOSイメージャの売上高は、前年同期の388億円から、1108億円へと大幅に伸長している。

 「電子デバイスはモバイル機器向けカメラモジュールが大幅に伸長。今後も、高性能カメラモジュール、タッチパネルコントローラなどの特徴のあるデバイスの販売強化を図る。ディスプレイデバイスは中国スマートフォン市場の成長鈍化と競争激化の影響を受けたほか、モバイル機器向け液晶の計画的な生産調整を実施。生産調整は9月までには完了させる。今後は、6月に量産をスタートしたインセルの安定した供給体制の確立とともに、中国華南地区にローカル人材の投入を含む営業体制の強化、重要顧客に対するサポート強化、全工程におけるサプライチェーンの抜本的見直しを図る」と述べた。


シャープ 取締役兼執行役員の榊原聡氏

 また、シャープ 取締役兼執行役員の榊原聡氏は、「液晶パネル事業に関して、我々に必要なのは、営業力、商品力、特徴を持った商品の開発。そして、後半工程の自動化などによるコスト削減である」とした。高橋氏は、「液晶は全体的に見ても極端に下振れしているわけではないが、5月以降、市場が厳しくなっているのは確かである。今の形の液晶事業の姿だけでなく、アライアンスを含めて、さまざまな可能性を探っていきたい」とした。

 なお、2016年3月期の通期連結業績見通しの修正は行わなかった。売上高は前年比0.5%増の2億8000億円、営業利益は800億円の黒字化を目指す。

 「第1四半期がほぼ予想通りの着地となったことを受けて、上期および通期ともに、見通しを据え置いた」としたほか、「第1四半期には、構造改革への取り組みをかなり進展させた。そうした効果が第2四半期以降に出て行くことになる」とした。

 また、現時点で公表していない通期の経常利益および当期純利益については、希望退職の完了に加えて、米国の液晶テレビ事業をはじめとする構造改革が具体化し、損益への影響が算出可能になった段階で公表する考えを示した。

 今回の第1四半期は想定通りとはいうものの、厳しい状況から抜け出していないことが浮き彫りになった。その一方、液晶テレビにおいては、米国からの販売、生産の撤退、そして一度は否定した完全分社化も改めて視野に入れるなど、液晶テレビ事業の構造改革をさらに一歩進めたともいえる。

 「5月時点で考えていたやり方ではしんどいという認識はある。いろいろな可能性について、広く対応をしてきたい」と高橋氏。「前のやり方のままでは、現時点ではなにも手を打てていなかっただろう。スピード感を持って取り組んでいる。そして、10月からのカンパニー制によって、さらに加速する」と続ける。

 2015年初めに、環境変化に対応できず、大幅な赤字へと下方修正した教訓が生かせるか。高橋氏の舵取りが注目される。

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