DeNA「ハッカドール」エンジニアに聞く--突き抜けたオタク特化のこだわりと開発の奇跡

 ディー・エヌ・エー(DeNA)が、サービスを展開しているニュースアプリ「ハッカドール」。アニメやマンガ、ゲームなどといった、いわゆるオタク系ジャンルに特化したニュースアプリとして2014年8月からサービスを開始。配信から半年以上が経過し、ダウンロード数は3月時点で60万、ページビューは7000万を突破しているという。

  • 「ハッカドール」キービジュアル

 リリース後もミニゲームが楽しめるハッカゲームセンターのほか、学習した情報をひも付けるアカウント情報の引き継ぎ機能の実装など、さまざまな改善や機能追加も行っている。またアプリ内に登場しているキャラクターを活用し、アニメPVのほかキャスト陣によるイベント、マンガボックスでのマンガ連載、情報番組となるニコニコ生放送「ハッカちゃんねる」などいったキャラクターコンテンツとしての展開も行われ、ニュースアプリとしては独特の存在感を放ち独自の地位を確立している。

 このアプリを開発・運営しているのは、DeNAのなかでも屈指のアニメやマンガ、ゲーム好きが集まった美少女Mobageチーム。2013年12月のコミックマーケット(コミケ)85の企業ブース出展に端を発し、2014年の春に正式にチームとして発足。そのタイミングからプロジェクトとしても動き始め、極めて少人数かつ数カ月といっていいほどの短期間でアプリのリリースを実現したという。

 現場としてのハッカドール開発の舞台裏について、美少女Mobageチームのエンジニアである広瀬裕規氏と榎本悠介氏に、またプロデューサーである岩朝暁彦氏にも補足をいただきつつ聞いた。

 広瀬氏はIT企業のプラットフォームエンジニアを経てDeNAへ。DeNAでもエンジニアとして従事していたところ岩朝氏と出会い、ハッカドール開発とチームに参加。美少女ゲームを2000本プレイした美少女スペシャリストだ。榎本氏は新卒でDeNAに入社後、Mobageのオープンプラットフォームにおける開発と運用を担当し、2年目となるタイミングでチームの立ち上げとともに参加。ゲームのやりこみプレイヤーで、榎本氏いわく「ボンバーマンをやりすぎて大学で2回留年した」という。開発では広瀬氏がクライアントサイドを、榎本氏がサーバサイドを担当したひとりとなっている。

榎本悠介氏(左)、広瀬裕規氏(右)
榎本悠介氏(左)、広瀬裕規氏(右)

美少女ゲーム2000本プレイで役立ったのは「人生」

--まず、どういう経緯でハッカドールの開発に参加したのか教えてください。

広瀬氏:僕はもともと新規事業をやりたくてDeNAに入ったんです。そして新規事業を創出していく部署に配属されて企画を求められたのですけど、かっこいいネットサービスがなかなか思いつかなくて。なので思い切って美少女キャラクターをテーマにした企画を提案したのです。そうしたら、当時の上司から今の部署の部長に伝わってプレゼンを行うことになりました。そのときに、今後美少女キャラクター系のタイトルにも力を入れるので、こっちに来てほしいと誘われて。それで岩朝を紹介してもらったのがきっかけになります。その後、岩朝がハッカドールのプロジェクトと美少女Mobageチームを立ち上げるときに、正式に異動しました。

榎本氏:僕はもう少しあとで、当時の上司から「来週から新しいところに移って」と突然言われて。広瀬ほどドラマティックなことはないですが、いきなりだったので驚きました。ただ、移ったらとても面白い場所なので、本当に良かったと思っています。

岩朝氏:広瀬と出会ったときは、まだプロジェクトとして立ち上げられるかわからなかった時期で、自主的に進めていたのです。広瀬も違う仕事をしていたのですが、相談すると「今から作りますよ!」と、突然プロトタイプを作り始めたんです。それで、1年前の春に美少女Mobageチームが立ち上がるときに加わってもらいました。また、その時に若いメンバーも加わって欲しくて、榎本も誘いました。

--広瀬さんが、自主的にでも作り始めようと思ったのはなぜでしょうか。

広瀬氏:単純にいい企画だと感じたからです。そのいい企画というにも2つの条件があると思っています。まずは成功しそうなロジックがあるか。絶対に成功するというのはありえませんが、うまくいきそうだと信じることができるロジックがあること。あとは新しいことであったりチャレンジングであったりと、モチベーションを上げてくれるものであって、単純にワクワクできること。その2つの条件が、ハッカドールの構想から感じられたので、作りたいというモチベーションが沸いてきて、仕事関係なしに手を動かしていました。

--ハッカドールに関して成功しそうなロジックというのを、具体的に教えてください。

広瀬氏:新規のネットサービスというのは、いかに便利なものを創出していくかにかかっていますし、そこを想定して作られます。今、アニメやマンガ、ゲームなどあらゆるコンテンツがあふれすぎていて、知られないうちに消えてしまうものが多いと感じています。それをマッチングさせることによって欲しい情報がユーザーにちゃんと届ければ、オタク活動がはかどるだろうと。そのことを岩朝から聞いて、自分もオタクなので感覚はわかるんです。マイナーだけど、偶然にも本当にいいコンテンツを見つけると、宝物を発見したようにテンションが上がるわけです。それを確実に得られるサービスであればいいものになる。そう思ったからこそ作りたいモチベーションにかられたんです。

--チームにはどういう趣味性を持った方がいますか。

広瀬氏:榎本と組んでいるもうひとりのサーバエンジニアは声優に詳しく「声優ソムリエ」と呼ばれていますし、ほかにもBL(ボーイズラブ)のソムリエがいます。私から見ても神レベルです。こちらが好きな作品を言うと、趣味性を考慮して的確なBL作品をオススメしてくれます。あとプロダクトマネージャーは古典的なオタクで、ロードス島戦記とかアルスラーン戦記を語り出すと止まらないですね。

 アニメやゲーム以外のジャンルでも、個人で日本一Android端末を持っているんじゃないかというぐらいのガジェットオタクもいます。ほかにも分析まわりでレコメンデーションのエンジンを担当しているメンバーは技術オタクなところがあって、何もお願いしてないのに勝手に機能を実装してきますね。

榎本氏:毎朝集まって進捗(しんちょく)の報告をする会もありますけど、ひとり5分ぐらい持ち回りで、自分が見ているアニメやはまっているゲームの話をする時間もあって。その話を聞いているだけでも面白いです。会社にこんな場所があったんだ、と思いました。

--エンジニアはオタク趣味を持っている人が多いのでしょうか……?

広瀬氏:ことエンジニアにおいては少ないと感じます。これはDeNAだけではなく、私はBtoCのネットサービスの会社をいくつか見てきましたけど、エンジニアだからオタク趣味を持っているということはないですね。アニメなどを主とする企業のエンジニアなら少し違うかもしれませんが、私の見る限りはそうではないです。

岩朝氏:DeNAのオタク趣味を持っている人は突き抜けていると感じます。仮にある企業で10人に3人ほどマンガやアニメに親しんでいるという方がいて、その方のオタク度を2だったとすると、DeNAは100人にひとりしかオタクな人はいないけど、オタク度は1000ぐらいという感覚です。それがたまたま社内に分散して存在していたのです。

--それぞれの得意分野で、ハッカドール開発に役立ったと思うところはありますか。

  • 広瀬氏はMobage内の美少女Mobageコーナーにてレビューを執筆。「レビュー」とあるが、ゲームではなくキャラクターの魅力について語っている

広瀬氏:僕にとってはUIとか開発にという話ではなくて、人生に生かされていると考えています。美少女ゲームは一冊の本を読むようなもので、ものの考え方や生き方とか立ち直り方とかですね。

岩朝氏:チームのデザイナーに女性のスタッフがいるんですが、デザイナーとエンジニアは対立しやすいところもあるんです。そこで広瀬が美少女ゲーム2000本プレイで培った対女性コミュニケーションスキルが役立って、ランチ会や女子会を開くということをしていましたね。人生にというのはいいすぎかもしれないですが、チームビルディングには役立っているところもあると思います。

榎本氏:レコメンドを作るにあたって、自分のなかで強く興味を持っているものがないと、それが好きな内容の記事かどうかがわからないです。レコメンドの調整をするときも、自分の読みたい記事が明確にあることによって軸が生まれて評価ができますので。あとはひとつのことにのめり込む性質は、今のチームに向いていると思います。

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