ディー・エヌ・エー(DeNA)といえば、ゲームやプロ野球をイメージする人が多いことだろう。しかし、数年もしないうちに同社がスマートフォン広告の強力なプレーヤーの1社として名を連ねているかもしれない。
2014年はマンガ雑誌アプリ「マンガボックス」や、女性向けファッションまとめサイト「MERY」、住まいに特化したまとめサイト「iemo」、電子チラシサービス「チラシル」など、同社の主力であるゲーム以外の事業にも力を注いできたDeNA。各サービスはそれぞれ異なる年代や性別のユーザーに利用されているという。
たとえば、700万ダウンロードを超えるマンガボックスは10代後半~20代前半の男性、月間2億PV・1500万ユニークユーザー(UU)のMERYは10代後半~20代全般の女性、月間490万UUのiemoは20代後半~30前半の女性を中心に利用されているそうだ。チラシルは20代後半以降の主婦が多いという。
このように幅広いユーザー層にリーチできていることから、DeNAではMERYやiemoを買収した2014年10月にスマートフォン広告の専門チームを発足。両サービスの広告販売を皮切りに、12月にはマンガボックスの、1月にはチラシルの広告販売も開始した。
DeNAならではの強みは代表的なスマートフォン広告である「通常バナー」「ネイティブバナー」「コンテンツネイティブ」の3つの領域をすべてカバーしていることだ。まず、「通常バナー」についてはサイバーエージェントとの合弁会社であるAMoAdがスマートフォン向けのアドプラットフォーム事業を展開している。
「ネイティブバナー」は、記事一覧ページなどでコンテンツの一部のように自然な形で表示される広告のこと。この領域については、AMoAdと共同でDeNA運営サービスに特化した広告配信プラットフォーム「DeNA Ad Platform」を2月から展開している。メディアごとにオリジナルのフォーマットやクリエイティブを用意して、高い広告効果を実現する商品だ。
DeNA Ad Platformは、マンガボックスやiemoで提供している。たとえば、マンガボックスでは一覧表示された各マンガのサムネイル画像の中に、親和性の高い広告コンテンツを表示している。DeNA 渉外統括本部 広告ビジネス部 部長の長村禎庸氏は、「文字は全体の20%以下、キャラは3人以上いたらダメなど、マンガボックスのユーザーが好むクリエイティブになるよう厳しくルールを設けている。それに合わないクリエイティブは掲載しない」とこだわりを語る。
そして、最後の「コンテンツネイティブ」はそれぞれのメディアの特性に合わせたオリジナルの広告コンテンツを制作する商品。たとえば、iemoでは編集部がタイアップ記事を執筆することでクオリティを担保している。またマンガボックスでも、編集部がその商品のオリジナルマンガを用意して、読了後にアプリや商品ページへと誘導するメニューを提供している。マンガ自体の面白さも追求しており、広告でありながらユーザーが通常のマンガと同じように楽しんで読み進められるようになっている。
長村氏によれば、1月に4つのサービスの広告商品が出揃い、それから2カ月後の3月時点で売上げが3.5倍に増加するなど滑り出しは好調だという。「DeNA Ad Platformの売上げがかなり上がっている。特にマンガボックスのネイティブ広告の引き合いがあり、我々もここまでかと驚いている」(長村氏)。
それぞれのサービスで広告主にも違いが見られる。MERYとiemoでは飲料メーカーやインテリア、コスメ会社などが多く、実際にスキンケア商品などは購入にもつながっているという。チラシルはイオンやコープといった小売店が多く、今後は特定の商品を売っている実店舗を紹介する機能なども提供する予定。そしてマンガボックスは、広告主のほとんどがゲーム会社なのだという。
今後は、各媒体を横断的に活用していきたいと長村氏は話す。たとえば、MERYであるスーパーマーケット限定の飲料水を紹介した際に、チラシルでそのスーパーを利用している人向けに広告を配信したり、複数の媒体にまとめて広告を表示するといったことなどだ。「4つ尖ったメディアがあるので、それらを組み合わせて提案力を高めたい」(長村氏)。
4月以降には、ゲームプラットフォーム「Mobage」や電子書籍の「Eエブリスタ」など他の媒体でも広告を展開する。また、12月に開始した食に特化したまとめサイト「CAFY(カフィー)」を始め、今後新たに提供するメディアも加えていきたいとした。
「我々は広告ネットワークを構築して自らコンテンツも作っている。また、各メディアの規模も数百万と比較的大きいため、GunosyやAntennaとは違う勝ち方ができると思っている。この半年間はスピード感をもって取り組んできたが、あと1年すれば良いポジションを築けるのではないか」(長村氏)。
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