常にGPSで通信するためバッテリ消耗が激しい「Ingress」。普段ほかのアプリも使う場合にはバッテリの持ち運びが必須だ。3月28日に京都市内で開かれたイベント「Shonin(証人)」でも、長時間の活動に耐えられるよう、多くのエージェントがバッテリを持参していた。
CNET Japanの特集ではこれまで、町おこしや地方活性化にフォーカスしてIngressの1つの側面を伝えてきた。今回と次回は視点を変え、エージェントの活動を影で支えるバッテリメーカーに着目する。
まずはIngress公式バッテリ「INGRESS POWER CUBE」を2月に発売したcheero。Niantic Labsとの共同開発に至った経緯からものづくりの哲学までを、cheeroを展開するティ・アール・エイの代表取締役である東享氏と、東氏の娘で、cheeroのブランディングプロデュースや商品開発を担当するトーモのCEO兼代表取締役である東智美氏に聞いた。
――Ingress公式バッテリの開発に至った経緯は。
智美氏:2014年7月、IngressのiOS版がリリースされた時に、普段仲良くさせていただいているMacユーザーのブロガーたちが一斉に始めました。その中で「cheeroはIngressのバッテリを作らないのか」との声をいただいたのがきっかけです。
いざ作ろうとしてもライセンスの問題があります。ちょうど知り合いのライターがNiantic Labsとつながりがあったため、仲介をお願いし、川島さんに提案しました。
当初は、バッテリにロゴをプリンティングする案を出したのですが、それだと面白くないという話に。
たまたまNiantic Labsのスタッフに、過去にcheeroがアマゾンとコラボして開発した「ダンボーバッテリ」を使ってくださっている方がいて、「ダンボーの目を光らせたり、くぼみをつけるために金型を作ったりといった、バッテリという“消耗品”に対して、ここまでデザインやものづくりにこだわる会社であれば面白いものを作ってくれるかもしれない」とご期待いただいて“逆オファー”をいただきました。
ダンボーバッテリは、当時別件でアマゾンとやり取りとしている中で生まれたもの、偶然の産物です。それが今回のIngressにつながるわけで、ものをオリジナルできっちり作っていると、こういう副産物があるんだなと勉強になりました。
――バッテリの開発時にこだわった部分は。
享氏:やはりデザインです。「パワーキューブ(回復アイテム)をバッテリとして体現してほしい」というのがNiantic Labsの希望で、ジョン・ハンケさんさんからは「エレガントでクールなもの」を求められました。具体的な指示はなくて、そのイメージに沿って、我々が考える必要がありました。それを、液晶を使ってパワーキューブを表そうかと。
智美氏:パワーキューブのデザインは、ピンク色のもやが動いている感じですよね。当時の父のアイデアとして、「ピンク色で透明感があって動くもの」をベースとし、バッテリに液晶を使ってアニメーションを映すことを考えていました。
パワーキューブは「ピンクに光ること」が重要。そのためにはLEDを使わなければなりません。そのLEDをバッテリにどう組み込んでデザインするのかが非常に難しくて、さまざまなデザイン会社や大学の工学部におじゃまして相談しながら、「うすく、軽く、なおかつ大容量を維持しながら、LEDで光る」という課題に取り組んでいました。これが難航し、約2カ月を使いました。
LEDの球を入れると、その分の基盤が増えますし、球が出た分を覆わなければならない。そうすると、またサイズが大きくなってしまう。とても難しかったんですよ。
どうしようかと行き詰まっていた時、父のアイデアを形にしていたデザイナーが、今の形になるもののモック(サンプル)を持ってきました。製品化までに4回くらい作り直しているので、その元になるものですね。
享氏:一番の特徴は、デジタルとアナログの両方を使っていること。光がぽわーんと点滅しますよね。これはアナログによるもので、電流に抵抗を加えることで点滅させています。デジタルでは表現できないものです。
そのため、実は温度などの外部環境によって光の点滅する速度が変わります。みなさん気付かないとは思いますが(笑)。
デザインするにあたり、「色」ひとつをとっても検討を重ねました。「白」と一言でいってもさまざまな白があります。Ingressの世界観をあらわせるよう、ベストだと思うものを選びました。
――開発は順調でしたか。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」