スマートフォンを活用した位置情報ゲーム「Ingress」(イングレス)。Googleの社内ベンチャーからリリースされたもので、米国発のゲームながら日本での人気も高まっている。陣取りゲームとして、実際の場所を歩いてプレイすること、またオリエンテーリングの要素もあり、Ingressによる町おこしや集客を試みる動きも活発化しつつある。
茨城県が運営するインターネットテレビ「いばキラTV」では、「HACK IBARAKI」という形でIngressに関する動画を配信している。プレイヤーであるエージェントの育成を支援するために、プレイ方法を解説するほか、県内にあるポータルの調査状況をレポートしているという。なぜこのような取り組みを始めたのか、茨城県広報広聴課 広報戦略室の立川知子氏に聞いた。
いばキラTVは茨城県の魅力を発信することを目的として設立されたインターネットテレビで、2012年に試験配信を経て開局。個性的なご当地キャラクターが活躍する番組や、ミニチュア人形劇を取り入れるなど、さまざまな切り口で茨城の情報発信を行っているという。
「もちろん一方的な情報発信だけでなく、インターネットの特性を生かした情報発信も取り組んでいます。不定期ではありますが、SNSを活用して視聴者の方々から投稿写真を募集したり、ソーシャルストリームでコメントなどをいただきながら視聴者と一緒に茨城のネタで盛り上がるライブ番組など、いろいろなチャレンジしているところです」(立川氏)
Ingressの番組展開については、企画案の打ち合わせの際にインターネットに詳しいスタッフからの提案をきっかけとして始まった。もっとも立川氏も含めてスタッフの多くがIngressを知らなかったと振り返る。ただIngressの概要として実際の場所に来るということ、そしてポータルが県内の観光地などに多く存在していることを知り、活用の可能性を感じたとしている。
展開を進めるにあたって、スタッフが初心者であり日本語化もそれほど進んでいなかったことから、初めての人にわかりやすく使い方を紹介するところから開始した。特設サイトを開設し、遊び方のコーナーを設置。それこそポータルをハックするといったことや携帯電話の認証といった初歩から、プレイ中に出てくるさまざまなアクションについて、動画を用いて丁寧な解説を行っている。このあたりはスタッフの初心者目線が役に立っているという。
「動画ですと、初めての方でもどんな風にスマホにタッチしたりボタンを動かすかがわかりやすいです。また、たくさん種類のあるアイテムがそれぞれどんなアクションをを起こすのかも見てみたい気持ちもありました。ただ初期の撮影ではスタッフも初心者ということで大変でした。リンクを貼る動画を撮影しているときに、通りすがりのレベルの高いユーザーさんにあっさりレゾネーターを壊されてしまい、ポータルを取り戻すのに苦労したことがあります(笑)」(立川氏)
単なる紹介動画にはとどまらず、一部の動画の解説はバラエティ番組「イバラキングのごじゃっぺハイスクール」の茨城弁太郎先生が担当。リンクの張り方や多重フィールドを、かかしや田んぼに見立てて茨城弁で説明するなど、いばキラTVらしさを出した動画も用意されている。
Ingressに対する取り組みは現在のところいばキラTVとしてのものであり、県をあげて活用していくかは未定としている。もっとも茨城の魅力を知ってもらうには、興味をもってもらうことが大切という考えから、なんらかの施策は考えたいとしている。
「まだ始めたばかりですし、Ingressのような取り組みはいばキラTVとしてはなかったものなので、まずできるところから始めている段階です。あくまでも構想になってしまいますが、番組を通して県内の特定のポータルをめぐるような、プレイヤーが茨城に来てもらうイベントなどを立ち上げたいとは考えています。茨城県は、県北地域の里山、県南地域の筑波研究学園都市、太平洋に面した海岸などに加えて日本三名園の偕楽園や三名瀑の袋田の滝など、見どころのあるスポットがたくさんありますので、そういった場所を知っていただくきっかけにつなげていきたいです」(立川氏)
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