享氏:製品を1月末にリリースしたいという思いがあり、デザインが固まってから約2カ月で完全に仕上げなければならない状況でした。中国の工場で生産しましたが、材料の調達や、大量生産の金型を作る技術の問題など、あらゆる課題がありました。私が中国の工場に直接乗り込み、付きっきりになって、生産工程をすべてやり直すというか、工場ごと改変しました。そうでないと間に合いませんでした。
智美氏:CESに出展していたため、父は1月2日から10日までラスベガスにいました。帰国後すぐに中国に飛んで、朝から晩まですべてIngressに時間を使っていました。
享氏:中国には知り合いの技術者に同行してもらいました。今回のバッテリは世界で発売するものであり、検査は厳しくしないといけない。不良品があったら大変なことになります。
とにかく時間との戦い。デザインから始めてマーケットに出すまで、通常だと半年以上かかるものを4カ月ちょっとで完成にこぎ着けました。もしかしたら、時間がなかったからこそ製品化できたのかもしれません。ちんたらやっていたら完成できなかったと思います(笑)。
智美氏:Niantic Labsがサードパーティの企業と製品を共同開発したのは、ドイツのSENNHEISER(ゼンハイザー)によるヘッドホン「MOMENTUM On-ear Ingress」に次ぐ2社目。バッテリに関しては、世界中のバッテリメーカーからオファーがあったそうですが、こんな大阪の十数人規模の会社をパートナーに選んでいただいて、一緒に作れたことはエポックメイキングなことではないかと思います。
――商品にMODカード(ゲーム内アイテムが入手できるパスワードが書かれたカード)が封入されていました。
智美氏:“公式感”がほしかったので、こちらから提案しました。ご快諾くださり、初期ロット分すべてのパスワードを用意してくれました。これは発売直前に作ったので、MODカードのデザインをこちらで1日で仕上げました(笑)。
――Ingressやダンボーのコラボ製品から、ものづくりへの情熱を感じます。
智美氏:父はものづくり歴30年以上で、もともとは小さな商社で機械部品を中国で作って卸す仕事をしていました。バッテリの事業を始めるときも、そのノウハウをすべて投入しています。
具体的には、エレベータの歯車に使われる部品を作っていました。人命を預かるようなナーバスなものづくりをやり続けてきたので、バッテリも同じ観点で作っています。そしてそれを継続した結果が、ダンボーやIngressにつながったのではないかと思いますね。
父の中のものづくりの信念は「不良品率を0.1%に下げる」こと。世界の不良品率の合格点は0.5%くらいらしいのですが、今のところcheeroは0.2~0.3%程度。国内の大手メーカーと同じ基準なんです。0.1%はほぼ存在しないレベルではあるのですが、そこを目指してものを作っています。
享氏:ものづくりをする以上は「不良品率0%」が当然よいのですが、それはお金がかかりますし、時間がかかりますので、まずは0.1%。そこをいま一所懸命に取り組んでいます。
バッテリは基本的に安全であることが第一。それがcheeroのコンセプトのベースにもなっています。デザインや価格などの要素は、安全であるという信用の上に乗ってくるもの。まずは安全な製品を届けることが大前提です。
――Ingressが盛り上がることで、各種バッテリ製品の売上に影響はありましたか。
智美氏:うーん……今のところ特に感じないですね(笑)。バッテリはものすごい量が市場に出ているので。
ただ「青と緑が売れやすい」というのは多少あるかもしれません。実際、店舗から聞いた話では、カラフルなダンボーバッテリのミント(青)と抹茶(緑)を買われる方が結構いらっしゃったそうです(笑)。
青と緑を使ったケーブルなどを、Ingress向けの見せ方にしている企業も出てきています。また、Ingressに絡めた商品開発をしようとしているメーカーの話もちらほら聞きます。
――最後に、エージェントへのメッセージをお願いします。
享氏:ご購入いただいた皆さんには本当に感謝しています。Ingressを知らない方からも、今回のバッテリを見て「きれい」と言ってもらえることがあり、とても嬉しいです。我々はもっともっとよい製品を作るので、皆さんもがんばってください!
※次回は、Ingress公式バッテリを4月に発売予定のANKER(アンカージャパン)へのインタビュー記事を掲載します。
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