そしてもう1つ、MVNOを巡る大きな動きとして注目されるのが、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が3月10日に、高速データ通信の増量を4月1日より改定すると発表したこと。これによって同社の「IIJmio高速モバイル/Dサービス」の場合、最も安価なミニマムスタートプランの通信量は2Gバイトから3Gバイトに増量され、データ通信専用SIMの場合月額972円(税込、以下同様)、音声通話機能付きSIMでも1728円で、月当たり3Gバイトの高速通信利用が可能になる。
このIIJの通信容量増量に合わせて、早速いくつかのMVNOが追随する動きを見せているのだが、一方で気になるのが、IIJの業績下方修正だ。IIJは3月24日、NTTドコモの卸定額通信料の低減率が、今年は想定より少なかったとして、通期業績予想を下方修正すると発表しているのだ。
2014年にMVNOの参入が相次ぎ、安価で大容量なサービスが提供できるようになったのには、NTTドコモのパケット接続料、つまりMVNOに回線を貸し出す際の料金が大場に下がったことも大きく影響している。特に2013年度は、多くのMVNOが選択しているレイヤー2接続で56.6%と、パケット接続料の低減率が大幅に高まったことから、IIJは2014年度も同様の低減率になると読んで業績予想を立てたと見られる。
だがパケット接続料は設備にかかる費用をトラフィックで割る形で算出され、2014年度はスマートフォンの伸びの停滞でトラフィックが伸び悩んだためか、低減率も2013年度と比べレイヤー2接続で23.5%と、ほぼ半分になっている。パケット接続料は過去にさかのぼって適用されることから、2014年の接続料が想定通り下がらなかったことが、IIJの業績予想に大きな影響を与えた訳だ。
今後もスマートフォンの普及は停滞傾向が続くと見られるし、今年からNTTドコモは、より通信効率の高いLTE-Advancedを導入するなどして、通信の効率化を進めている。それゆえ今後、従来のように大幅なトラフィックの拡大は見込みにくくなり、パケット接続料は従来ほど下がりにくくなると考えられる。
MVNOはこれまで、パケット接続料が大きく下がることを見込み、料金値下げや通信量の増量をすることでコストパフォーマンスの高さを訴える戦略をとってきた。だが今後接続料が大きく下がらないとなれば、値下げや容量の増大をするほど経営を圧迫することとなるし、それがサービスやサポートなどに影響すればユーザー離れを招く恐れもある。今回の低減率の弱含みは、IIJだけでなくNTTドコモの回線を使用している他のMVNOにも大きな影響を与えていると見られ、今後は一層厳しい環境下での競争を迫られることになりそうだ。
それゆえ今後、MVNOが安さだけで大きな注目を集めるのは難しくなるだろうし、現状のような状況が続けば、かつてISPで起きたような大規模な再編が、短期間のうちに起きることも十分考えられる。それを避けるにはやはり、価格施策に依存せず、MVNOならではの価値を打ち出したサービス展開を進めることが、求められるだろう。
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