logo

価格競争からブランド重視へ--大きな動きが相次ぐMVNO最新動向

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 2014年、“格安スマホ”で大きな話題をとなった仮想移動体通信事業者(MVNO)。2015年に入ってからもMVNOに関する動きは活発で、大きな動きが相次いで起きている。SIMロック解除義務化を5月に控える中、今年に入ってからMVNO、ひいては格安スマホを取り巻く環境にどのような変化が起きているのかを改めて振り返ってみたい。

市場拡大と共に格安スマホに求められる“ブランド”

「アップルと対抗できるブランドはVAIO」--日本通信ら「VAIO Phone」を月額2980円で
「アップルと対抗できるブランドはVAIO」--日本通信ら「VAIO Phone」を月額2980円

 携帯電話キャリアから回線を借り、ネットワークサービスを提供しているMVNO。昨年は“格安スマホ”向けの安価なネットワークサービスとして大きな注目を集め、参入する事業者が相次ぐなど、MVNOのビジネスが非常に大きく動いた1年だったといえる。

3月12日に発表されたVAIO Phoneは、端末でのこだわりが感じられず大きな批判を集めたが、日本通信にとっては“VAIO”というブランドが重要な意味を持っていたようだ
3月12日に発表されたVAIO Phoneは、端末でのこだわりが感じられず大きな批判を集めたが、日本通信にとっては“VAIO”というブランドが重要な意味を持っていたようだ

 今年に入ってからも、MVNOを取り巻く動きは非常に活発だ。実際、1月から3月にかけての動きを振り返っても、業界全体に大きな影響を与える出来事がいくつか起きているのが分かる。そのうちの1つは、MVNOのスマートフォン事業、特に端末に関するものだ。

 その動きを象徴しているのが、3月12日に日本通信とVAIOが共同開発した「VAIO Phone」である。VAIO Phoneは、ミドルクラスのスマートフォンと日本通信のSIMによるセットのサービス。こだわりの強いPCを開発するVAIOが関わった端末ながら、平凡なデザイン・スペックのスマートフォンであったため、発表直後より大きな批判を集めたことから、ご存じの方も多いと思う。

ソニー、Xperiaで格安スマホに参入--注目されるVAIOとの関係
ソニー、Xperiaで格安スマホに参入--注目されるVAIOとの関係

 しかし一方で、端末を販売する日本通信にとっては、すでに消費者に馴染みのある“VAIO”というブランドを用いることが、戦略上重要な意味を持っていたようだ。その理由は、3月19日に実施された、イオンのスマートフォン新製品発表会からも見て取ることができる。同発表会において、イオンはVAIO Phoneのほか、「KYOCERA S301」「Xperia J1 Compact」の3機種を新たに投入することを発表したのだが、同社がラインアップを揃える上でこだわったのは、“日本ブランド”の製品という点であったのだ。

春夏商戦向けの端末を発表したイオンは、日本ブランドにこだわったラインアップを揃え、スマートフォンのメインターゲットとなる40代以下の獲得を目指す
春夏商戦向けの端末を発表したイオンは、日本ブランドにこだわったラインアップを揃え、スマートフォンのメインターゲットとなる40代以下の獲得を目指す
「イオンスマホ」第6弾として京セラ製「KYOCERA S301」が登場
「イオンスマホ」第6弾として京セラ製「KYOCERA S301」が登場

 格安スマホ向けの端末としては、最近中国・台湾など海外メーカー製の端末が増えており、デザインや性能面で優れたものも増えつつある。だがスマートフォンに明るくない消費者からしてみれば、iPhoneなど一部を除けば海外メーカーのブランドは認知度が必ずしも高い訳ではない。イオンは従来のシニア向けから、より幅広い層のユーザー獲得を狙うことを表明しているが、そのためには多くの消費者が安心して購入できる、日本のブランドが必要だったようだ。

 つまり格安スマホの一層の市場拡大を目指すには、スマートフォンに詳しい人達や価格を重視する人達だけでなく、より幅広い層に理解される商品が必要となってきている。そのためには認知度が高く、安心して購入できるブランド力が求められている訳だ。格安スマホを販売する事業者や提供するメーカーの側も、単にコストパフォーマンスのよい機種を揃えればよいという訳にはいかなくなってきたといえるだろう。

格安スマホの主役はISPから量販店に?

 同様の理由で、もう1つ大きな変化が起きている。それは販売面での変化だ。昨年まで格安スマホのけん引役は、その先駆けとなったイオンを除くと、ISPなどネットワークに強みを持つ事業者が主体であった。だが今年に入ってから、そうした流れに大きな変化が起きてきている。

 それを象徴しているのが、2月18日にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)とフリービットが資本・業務提携を結んだこと。そしてこの提携によって、フリービットのモバイル事業の主導権がCCCに移り、今後はフリービット主導ではなく、CCC主導によるモバイル事業が展開されるということだ。

 フリービットはこれまで、「freebit mobile」として自社で端末を調達し、店舗を構えて販売するなど、MVNOながら独自性の強い垂直統合型のビジネスを展開してきた。だがフリービットは元々インターネット関連技術で、B2B主体のビジネスを展開してきた企業であり、コンシューマーに向けたブランドやマーケティングには弱みがある。そうしたことからモバイルビジネスをより大きくするには、弱みを補うパートナーが必要と判断し、CCCとの提携に至ったようだ。

フリービットはCCCと提携。これによってモバイル事業はCCCが主導権を持ち、フリービットはMVNEとしてCCCを支える役割を担うこととなる
フリービットはCCCと提携。これによってモバイル事業はCCCが主導権を持ち、フリービットはMVNEとしてCCCを支える役割を担うこととなる

 このフリービットの動きは、今後のMVNOのビジネスを見据える上で非常に象徴的なものだ。格安スマホのヒットを受けて多くのネットワーク事業者がMVNO事業に参入したものの、参入障壁が低いことから参入事業者が急増し、過当競争にもなりつつある。

 そうした状況下で求められるのは、先に触れたブランド力に加え、一般消費者に訴えかける商品を企画したり、多くの人に販売したりできる力であろう。こうした力を持つのは、イオンやCCCのようにリアルの店舗を持つ大規模な量販店や、楽天などのようにネットサービスの中でも大きな顧客基盤を持つ事業者に限られてくる。

ゲオホールディングスとNTTコミュニケーションズは4月2日に提携を発表、中古・新品の端末とSIMを組み合わせて購入できる「ゲオスマホ」を全国50店舗で展開する
ゲオホールディングスとNTTコミュニケーションズは4月2日に提携を発表、中古・新品の端末とSIMを組み合わせて購入できる「ゲオスマホ」を全国50店舗で展開する

 4月2日には、ゲオホールディングスとNTTコミュニケーションズがモバイル提携し、ゲオの新品・中古スマートフォンと、NTTコミュニケーションズのSIMを組み合わせたサービス「ゲオスマホ」を提供することを発表しており、小売流通大手がMVNOと組んでモバイル事業を積極化するという流れは、一層増えていくものと考えられる。それだけに今後は、販売面に強みを持つ小売り大手などが、キャリアに対抗し得る格安スマホ販売の主役になっていく可能性が高い。そしてネットワーク系のMVNOは、MVNEとしてそうした事業者を裏側で支える裏方の存在とななり、棲み分けを図っていくことが考えられそうだ。

-PR-企画特集