数日前から、Tim Cook氏率いるAppleが自動車の開発に取り組んでいるとのうわさが流れており、「Titan」という開発コード名まで報じられている。
Appleが本当に自動車関連の研究開発に本格的に取り組むのなら、同社が米証券取引委員会(SEC)に提出するフォーム8-K報告書に数字としてあらわれるだろうし、それを他社の提出書類と比較すればわかるのではないかと筆者は考えた。自動車の研究開発をするとなると、やはり費用は莫大なものになるからだ。そこで、PwC Strategy&の2014年冬のレポート(PDFファイル)に掲載されていた「研究開発費の多い企業上位20社」を見てみたところ、リストのうち6社までが自動車会社だった。
もう1つ特筆に値するのは、Appleはこの「トップ20」にさえ入っていないことだ。研究開発費のランキングではAppleは32位だが、上記のレポートに掲載された「最も革新的な企業上位10社」では1位につけている。研究開発費に関する限り、Appleはかなりの倹約志向だ。
だが、「革新的な10社」リストで筆者の目を引いたもう1つの企業は、5位に入ったTesla Motorsだ。
このデータによると、Appleが2014年に45億ドルの研究開発費を使ったのに対し、Tesla Motorsはわずか2億ドルだ。実際、研究開発費のリストでは、Tesla Motorsははるか下位の440位となっている。
つまり、自動車市場に大きなインパクトをもたらすのに、多額の研究開発費を注ぎ込む必要はないということだ。それにTeslaは、自社の特許を競争相手にも無償で公開する決断を下したことで、Appleのような企業に道を開いたと見ることもできる。
要するに、自動車の研究開発には多額の費用を注ぎ込むこともできるし、ごくわずかな費用ですませることも可能だ。研究開発費に関して言うと、Appleはわずかな額で大きな成果を上げている。ゆえに、同社が自動車の開発に取り組むとしても、研究開発費がVolkswagenやトヨタ自動車、GM、Fordと同等の水準に達するとは考えにくい。
はたしてAppleは自動車の開発に取り組んでいるのだろうか?おそらくAppleのような企業は、秘密裏に多くのプロジェクトを進めるのだろうし、またその多くが日の目を見ずに終わるのだろう。実際、Apple本社内のどこかの壁には、Appleブランドのテレビが掛かっているに違いない。さらにはAppleが自動車のプロジェクトに取り組んでいて、自動車関連のアイデアだけでなく、車載エンターテインメントのより良い活用法まで考えていたとしても驚かない。同社の「CarPlay」のようなテクノロジが、何の脈絡もなく生まれてくるはずがないのだから。
ただ、近いうちに、Appleが自動車を発表する日が来るかと問われれば、答えはノーだ。自動車はテレビと似たようなものだと筆者は思う。どちらも、企業が手を出しては損失を出す市場であり、Appleが関心をもつ市場だとは思えない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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