Zook氏 : イスラエルなどはミリタリーなバックグラウンドがすごいですね。「そのテクノロジはどこで学んだの」と聞くと政府機関で習ったとか、やはりレベルが高いですよね。あとは中国も勢いがすごいです。バリエーションも確かに高いし、世界のことをあまり考えなくてもいいというか、マーケットがもう出来ているのでそこから出てこないですよね。それはそれでいいのですが、我々もせっかくグローバルでやっているので中国の良さをどうやってアンロックして世界に広めれば良いかを考えています。
卒業した企業で印象に残っているのは、イスラエルでBYOD(私物のスマートフォンの業務使用)のツールを提供している「SkyGiraffe」という会社ですね。創業者がもともとマイクロソフトの社員だったのですが、自分で会社を立ち上げて、MSVの(開発ツールやクラウド環境である)「BizSpark」を使い、アクセラレータにも入ったので少しだけ投資もしました。現在はシリコンバレーに拠点を移して頑張っていますね。最近は大手企業のアカウントも取れているようです。
それと個人的にはやはりヘッドマウントディスプレイを開発する日本の「FOVE」を推したいですね。マイクロソフトではコンシューマ企業をアクセラレータの枠でサポートすることがノウハウ的に難しいところもあるのですが、そこでFOVEのような夢のようなプロダクトを作っている会社を支援できるのはとても嬉しいです。まさに日本の良さを生かした会社だと思うので、とても楽しみですね。
Zook氏 : 米国のサービスが多いのですが、エキスパートに有料で質問できるマーケットプレイス「Studypool」や、数人がグループになって牧場から直接、牛一頭を買うことができる「Farmstr」などは面白いですよね。あとは、忙しい人をターゲットにしているサービスや、ライフスタイルをシンプル化、パーソナライズ化したサービスなどでしょうか。たとえば、「Blue Apron」というサービスでは、ライフスタイルにあわせて最適なレシピと食材を毎週届けてくれます。
ファッションのトレンドなんて考えたことがないけれどオシャレはしたいという男性は多いですよね。「Trunk Club」では、そういう人のためにスタイリストがアンケートを分析して毎月定期的に服を送ってくれます。ユーザーは着るものだけを選んで送り返すというモデルです。300ドルくらいで簡易的な自宅のセキュリティが作れる「novi」というサービスもあります。家のセキュリティシステムはガッチリ守ってくれるけれど高額か、全くの無防備かという二極化した世界なので、その中間の価格で家を守ろうよというサービスです。
Zook氏 : イノベーションはどこでもできる世界になったので、もうシリコンバレーには行かなくてもいいんじゃないでしょうか。逆にシリコンバレーの考えは世界とズレてきていると言われ始めている。どうしてもVCのディレクションや方針の影響力が強すぎて、本当の意味でスタートアップがオーガニックに自社のサービスを作れる環境がなくなってきています。そういう意味でも、自分たちの強みや良さを重視して会社を作ったほうが、もっとロングタームで面白いサービスができるのではないかと思います。
ただ、サンフランシスコもシリコンバレーもこのままずっと役割はあると思います。お金を調達するとか、このノウハウはあいつしか分からないとか、スペシャルな場所ではあり続けると思うのですが、やはりシリコンバレーのVCやアクセラレータもみんな、世界を目指している。シリコンバレーに来ないと投資しないというスタンスはもう恥ずかしいというか、どんどん世界を見ていかないといけないフェーズにきていると思いますね。
砂金氏 : パリで支援したあるチームに、「どんなジャンルでやるんですか」と聞いたんです。ナレッジシェアと聞いて普通は会計やテクノロジを思い浮かべますが、「ファッションとアート」と瞬時に返ってきた。やはりフランスは違うなと。コーディネートなどを教える人がたくさんいるので、その人たちのナレッジをシェアできるようにしようと。そこにはリソースもニーズもある。必ずしもみんな西海岸のことしか見ていないわけではありません。他の地域でやった方がオープンスペースもたくさんあるし、どこかを経由して最終的にグローバルに出ていけばいいんです。
Zook氏 : 日本はいままで世界をイノベートした実績があります。エンジニアのタレントプールも他の国と比べて抜群だと思いますし、イノベートへの需要もある。そこにどうやってスタートアップカルチャーを根付かせるか。僕たち1社でできることではないので、他社も巻き込むことができれば、どんなにすごいものがまた日本から出てくるのかということは考えています。日本の拠点については準備しているところです。日本発のプロダクトをどうすればもっと発掘できるのかということを考えていて、東京が日本の技術を世界に輸出する役割を担う都市になればいいと思っています。
Zook氏 : スタートアップカルチャーというのは、こうやったらできるというものではありません。ひとつは成功した人たちを見て、自分たちもできるという気持ちをしっかり持ってほしいですね。そこにマイクロソフトや他社が参加することで、本当にちょうどいいサポートネットワークが作れると思います。また、最近は東大などもいろいろと取り組んでいますが、もっと多くのアカデミックのコミュニティと一緒にやってみたいですね。やはり大企業とスタートアップだけではエコシステムは作れません。あとは海外で一度成功した企業がもっと日本にきてほしいですね。IVSなどのイベントもありますが、もっとオープンな場所があったらいいなと思います。
砂金氏 : よく日本人は英語が苦手と言われますが、必ずしもCEOがネイティブスピーカーレベルで話せる必要はありません。僕がベルリンへ行った時にはドイツ語が話せないので、英語で話すしかありませんでした。そういう環境のなかで日本人はカッコつけて話そうとするのですが、自分のビジョンが明確なら下手でもいいので熱意を伝えることです。海外のピッチイベントなどにはどんどんチャレンジしたほうがいいですよ。
Zook氏 : 日本がどう思われているとか、これは海外で受けるとかそういうことはあまり気にせず、日本ならではの地域の強みを理解して、これで自分は何ができるのかというアイデアに集中すべきです。それから世界を見たほうが、もっと面白くて独自のものができるのではないでしょうか。それでも戦える環境がいまはあると思っています。
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