朝日インタラクティブが12月16日に開催した「第2回 CNET Japan Startup Award」において、スタートアップの支援に積極的な大手企業が登壇し、意見を交わす「大企業とスタートアップの協業が生み出すオープンイノベーション」と題したパネルディスカッションが開催された。
大手企業が投資ファンドなどを立ち上げスタートアップの育成に力を入れるケースはここ数年で拡大する傾向がみられるが、こうした取り組みを積極的に推進している企業は、スタートアップ・起業家との連携や協業のあり方についてどのように考え、実践しているのだろうか。
登壇したのは、NTTドコモ・ベンチャーズで共同事業開発プログラム「39works」のビジネスプロデューサーを務める井上拓也氏、米国Microsoft VenturesプリンシパルのAya Zook氏、伊藤園マーケティング本部販売促進部の角野賢一氏。モデレーターはCNET Japan編集長の別井貴志が務めた。
パネルディスカッションは、まず各登壇者が自身の取り組みとスタートアップとの関わりを説明するところからスタートした。
既存企業を支援するのではなく、アイデアの企画とサービスの開発から資金、リソース、ナレッジなどの提供により支援を行っている「39works」に携わる井上氏は、このプログラムの狙いについて「大企業の持つノウハウや資産とスタートアップ・アントレプレナーの持つアジリティを組み合わせることで、新たなイノベーションを生み出していくこと」と説明。
ビジネスディベロップメント、テクノロジ、3カ月から6カ月のPoC(Proof of Concept:仮説が正しいかどうかトライアルを行い検証すること)に必要な費用、そしてPoC期間中のマーケティングを提供することで、「壮大なアイデアはあるが、形にする方法がない」という起業家に道を拓きたいという考えを示した。
また井上氏は、プログラムの運営方針について「面白いアイデアをすばやく形にして、そのアイデアの成否をジャッジメントすることが重要だ」とコメント。PoC期間中にアイデアが世の中のニーズに合致していなかったり、想定したストーリー通りに受け入れられなかったりする場合には早期にサービスを終了することもあるという。すでに39worksから生まれたサービスのうち、飲食店の自動チェックイン・自動決済サービス「カオタス」はこれらの理由によりサービスを終了させたのだそうだ。
「すぐにサービスをローンチしてすぐに撤退する。NTTドコモ本体では無理な話ではないか」と別井が訊くと、井上氏は「ドコモは通信キャリアなので安心・安全を考えるのが第一だが、39worksはスピーディにやろうというコンセプトなので、ドコモとは別のプロセスで取り組んでいる。スピーディに新サービスを出すということは、スピーディに撤退しなければ限られたリソースで運用することはできない。カオタスの事例は、私たちの考え方が正常にワークしている証拠ではないか」と説明した。
井上氏によると、2015年春にはスマートロック「Akerun」を手掛けるスタートアップ「フォトシンス」を30worksが支援する形で、ホテルの宿泊利用をスマートロックによって便利にすることを目的とした「39HOTELS PROJECT with Akerun」を開始する予定とのことで、今後については「求めるものは情熱、アイデア、大きな構想(ビッグピクチャ)。ドコモの既存事業との整合性は考えず、世の中がワクワクするサービスをどんどん出していきたい」と語った。
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