デジタルマーケティング、活用度が低い日本--求められる組織体制の整備

齋藤公二 (インサイト)2014年12月01日 16時18分

 アドビシステムズが11月25日に発表した、デジタルマーケティングに関する意識調査「Adobe APAC Marketing Performance Dashboard 2014」では、マーケティング部門とIT部門の連携の必要性が強調されている。

 同調査は、企業の最高マーケティング責任者(CMO)やマーケティング上級職が参加する団体CMO Councilと共同で2012年から実施。アジア太平洋地域(APAC)の香港、韓国、中国、オーストラリア、ニュージーランド、インド、シンガポール、日本のCMOに相当職約800人から回答を得ている。日本は2013年から調査対象に含まれている。日本からの回答者は109人。

 同日の会見でマーケティング本部 デジタルマーケティング プロダクトマーケティングマネジャーの国和徳之氏は、今回の調査のポイントの1つとして「日本のマーケターは、IT部門の支援が不可欠と考えているにもかかわらず、最も支援を得られていない状況に置かれている」ことを挙げた。具体的には「ITからの支援がデジタルテクノロジの導入に不可欠」との回答がAPAC平均で24%だったのに対し、日本は38%と最も高かった。一方で「ITからの支援が得られている」はAPAC平均が16%のところ日本は6%にとどまっていた。

国和徳之氏
アドビシステムズ マーケティング本部 デジタルマーケティング プロダクトマーケティングマネージャー 国和徳之氏

 国和氏は、全体的な傾向として「われわれの別の調査では、マーケターの76%が、この2年間のマーケティングの変化は過去50年間よりも大きいとこたえた。マーケティング活動にデータを取得し活用することが当然であると考えられるようになり、高度なパーソナライゼーションやモバイルの活用が求められるようになった」と、デジタルマーケティングへの関心や期待がかつてないほど高まっていると指摘した。

 このような、デジタルマーケティングに対する期待自体は、APACと日本国内ではそれほど大きな違いは見られないという。たとえば、「デジタルマーケティングに関する経営者層からのサポートがある」との回答はAPAC平均59%に対して、日本は56%とほとんとど変わらなかった。

 「デジタルマーケティングが自社の競争力を創造すると考えている」についても、オーストラリアの97%、シンガポールの96%に対し、日本は85%だった。さらに「デジタルマーケティングが顧客との関係性を強化すると考えている」については、オーストラリア82%、シンガポール53%のところ、日本は69%と高い数字になっていた。

 しかし、マーケティングに対する投資や組織体制の整備については、APACと日本では大きなギャップが見られた。たとえば、「経営幹部がデジタルマーケティングがもたらすROI(投資対効果)を十分理解していない」については、オーストラリア11%に対し日本は63%と飛び抜けて高かった。また、「経営幹部の中にデジタルマーケティングの推進者がいる」は、オーストラリア62%に対し、日本は33%だった。

 特に顕著だったのは、ITツールやプロセスの整備だ。「IT部門が、デジタルマーケティングソリューションの選定と導入のプロセスに深く関わり大きく貢献している」はオーストラリア13%に対し、日本は6%。「自社内にデジタルマーケティングを分析する、経験豊富な専任の担当者がいる」はオーストラリア26%に対し、日本はわずか4%だった。

前田龍氏
アドビシステムズ マーケティング本部 デジタルマーケティング プロダクトマーケティングマネージャー 前田龍氏

 マーケティング本部 デジタルマーケティング プロダクトマーケティングマネージャーの前田龍氏は、こうした傾向について「オーストラリアやシンガポールなどのマーケティング先進国の取り組みが戦略とリーダーシップのもと推進されているのに対し、日本では意識は高いが活用度が低い、幹部が確信を持っていない、推進者が不在であるといった課題がある」と指摘した。

 調査は大きく「意識(Mindset)」「活用状況(Marketing Readiness)」「組織体制(Organizational Alignment)」「スキル(Marketing Skills)」の4つのカテゴリで各国別にポイント評価しているが、日本はどの項目でもAPAC平均を下回っていた。

 国和氏は「ITのインフラ環境が整っており、オンラインショッピングにも積極的な消費者が多い日本では、デジタルマーケティングによって顧客満足度を向上させる素地は大きい。経営層には、マーケティング部門とIT部門の連携をはじめ、顧客データを売上拡大につなげる組織づくりが求められる」と提言した。

 同社の顧客には、小売業で事業部を横串するマーケティング部隊を作り取締役CMOが統括しているケース、サービス業でデジタルマーケティング専任組織を機能会社として設立しデータやリソースを集約して事業会社を支援するケースが見られるという。部門ごとに縦割りになった日本の組織形態であっても、金融業では営業トップが推進役となり、営業企画本部などと連携して現場部門や経営層へ展開しているケースがあり、「企業や組織ごとにケースバイケースで取り組みを進めることができる」(国和氏)とした。アドビでも「Adobe Marketing Cloud」といったツールを提供するだけでなく、コンサルティングに近い部分から企業を支援できるとアピールした。


(アドビ提供)

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