携帯キャリア各社の2014年度7~9月期の決算が出揃った。KDDIが前期に続き、2桁成長を遂げるなど非常に好調だった一方、NTTドコモが大幅な減益で通期業績予想を下方修正。ソフトバンクモバイルも米Sprintの立て直しに時間がかかり、業績予想を下方修正するなど、厳しい内容となった。
またドコモが挽回のための新戦略として、固定通信サービス「ドコモ光」と、固定・携帯通信のセットによる割引を提供すると発表したことも、ライバル各社に波紋を広げているようだ。各社の決算発表内容とそこから見える今後の戦略、課題などについて確認していこう。
10月31日に決算発表したドコモ。最近の決算では減収減益の下降トレンドが続いているが、2014年度第2四半期の連結業績も、売上高が前年同期比1.2%減の2兆1730億円、営業利益が15.5%減の3996億円の減収減益となった。さらに驚きをもたらしたのは、通期業績予想を下方修正したこと。従来の通期予想は売上高4兆5900億円、営業利益7500億円であったのが、それぞれ4兆4000億円、6300億円と大幅に下げている。
業績の大幅な低下を招いたのは、皮肉にも新しい料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の好調にある。新料金プランは、10月15日に契約数1000万を超えるなど、当初の予定よりも急速に契約数を増やしているのだが、その分通話を多く利用しているユーザーが積極的に移行したことで、音声ARPU(1人あたりの月間売上高)が減少。
また同社代表取締役社長の加藤薫氏が「データSパックの契約が多かったのは事実」と話すなど、パケットパック(新料金プランのパケット定額サービス)に最も安価なものを選ぶユーザーが多く、データARPUの伸びにもつながっていないようだ。
その結果、2014年度上期のARPUは、前年上期と比べ音声ARPUが120円のマイナス、さらに新料金プランの影響によって110円のマイナスが加算され、パケットARPU(プラス130円)とスマートARPU(プラス50円)をプラスしても減少を補うことができなかった。このことが減収減益、さらには通期予想の下方修正にもつながっているようだ。実際、営業利益の下方修正要因として、新料金プランによる影響が当初予想費でマイナス1200億円と、非常に大きいことを示している。
現在も旧料金プランを継続する他社に対し、ドコモは早々に旧料金プランの提供を打ち切るなど、アグレッシブに移行を進めているだけに、その影響が大きく出た内容といえる。だが一方で、iPhoneの投入やキャッシュバック競争の終焉などにより、2013年と比べればドコモの競争力自体は回復傾向にある。また「dマーケット」などの新規事業領域でも前年比13%の収入増となるなど、順調な伸びを示している。
それゆえ今後は新料金プランに移行したユーザーに対し、データ容量の大きいパケットパックを選んでもらう仕組みを作り上げ、当初思い描いていた成長を実現できるかが勝負となってくるだろう。
そしてもう1つ、ドコモの今後の戦略を占う上で重要となるのが、固定ブロードバンドサービスの「ドコモ光」だ。これはかねてより噂されていた、NTT東西から光回線サービスの卸を受け、ドコモ自身が固定通信サービスを提供するもの。NTT東西の光回線サービス卸が総務省から認可を得られたことで、晴れて実現したものだ。
今回の決算発表ではドコモ光の詳細については明らかにされなかったものの、2015年2月よりサービスを提供すること、そして携帯電話と固定通信のセット契約による、いわゆる“セット割”の「ドコモ光パック」も提供されることが明らかになっている。契約するパケットパックが大容量であるほど割引率が高くなるなど、新料金プランに合わせた独自性も打ち出していくようで、ドコモ光のサービス内容も、今後の競争に大きく影響してくるといえそうだ。
今期の営業利益で主要3社中最下位となることを指摘された加藤氏は、「はっきり言ってしまえば我々は“ドベ”。チャレンジャーの精神をもって、ドコモのために何ができるか社員が工夫してくれる、筋肉質の会社になることを最大の目標にしている」と話している。大幅な下方修正となっただけに、最大キャリアという驕りを捨てた決死の取り組みが、回復には求められるだろう。
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