ドコモまさかの3位転落、KDDIは2桁成長--明暗分かれた携帯3社の決算 - (page 3)

国内携帯事業は収穫期へ、海外への軸足シフトを鮮明にしたソフトバンク

 ソフトバンクは11月4日に2015年3月期 第2四半期の決算を発表。売上高は前年同期比58%増の4兆1044億円、営業利益は19%減の5967億円と、増収減益となっている。ただし前年同期比はガンホー・オンライン・エンターテイメントやウィルコムの子会社化による一時益があることから、それらを除くと営業利益は22%増になるとしている。


ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏

 主力のモバイル事業のうち、ソフトバンクモバイルによる国内のモバイル通信事業を確認すると、前期は減収となっていたが、今期は累計契約数の増加に伴いサービスの売上が増加したことで持ち直しているようだ。今期は主力となるiPhoneの新製品が登場したことで、買い替えが進み端末販売が伸びたためと見られる。ただし一方で、ARPUは4260円と前期比で20円減少しているほか、解約率も1.27%と、他社が下落傾向にある中上昇が続いている。iPhone商戦が落ち着いた今後は特に、成長のけん引役が不在となるなど不安要素が大きい。

 また国内のモバイル事業に関して、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、国内における「設備投資のピークは過ぎた」と話しており、国内向けの設備投資は減らしていく方針を示している。実際、2014年度の設備投資額は5150億円と、前年度の7125億円と比べ大幅に下げているのが分かる。孫氏は「収穫期が来たと認識している」と話し、国内のモバイル事業が一定の地位を築いたことから、投資を抑えて安定したフリーキャッシュフローを得る方向に舵を切り始めたようだが、足元がまだ盤石とはいえない状況下ではまだ不安な印象も受ける。

  • 国内でのインフラ改善が進み競争力が高まったことを受け、今後設備投資は大幅に削減する方針のようだ

 ちなみに、NTT東西の光回線サービス卸や、ドコモが「ドコモ光」を提供したことに関して、孫氏は「(NTTグループが)優位的な立場を利用し、アンフェアな形で競争を妨げるのはよくない。脱法行為が行われていないか注意深く監視していくべき」と話し、ドコモ光に対する警戒感を示す。一方で「卸売の利用に関しては前向きに考えている」と話すなど、卸を受けてのサービス提供には前向きな様子を見せた。ただし「NTTを利するのはやや悲しい」と話すなど、複雑な心境は残るようだ。

 だが今回のソフトバンクの決算発表を見ると、ここ数年来、重視してきた国内のモバイル事業から、より高い成長が見込める海外へと事業の重心をシフトしつつあることを強く印象付けている。中でも現在、注力しているのは米国のSprint事業になる。Sprintは、8月から現在のCEOであるマルセロ・クラウレ氏の体制となり、MNPが純増に転じるなど顧客流出が改善傾向にあるほか、支払い実績の悪い顧客から、プライムカスタマー(優良顧客)へと顧客獲得方針を改めたことで、着実に成果を高めているとしている。

  • Sprint事業は時間をかけて経営改善する方針に切り替えたことで、営業利益の通期予想を1000億円下方修正

 しかし一方で、孫氏は「目先の収益ではなく、中期的に本質的な経営改善をする方向に舵を取った」として、営業利益の通期予想を1兆円から9000億円に下方修正している。Sprintの立て直しには時間がかかるとの判断が働いたようで、当面米国事業では厳しい立ち回りが続くと考えられる。

 またソフトバンクは、アリババで大きな成果を得た中国に加え、新たにインドやインドネシアなどの新興国も投資対象に加え、積極的な投資を実施していくことを発表。インドで人気のEコマースサービス「snapdeal」やタクシー配車プラットフォームの「OLA」、そしてインドネシアの「tokopedia」など、いくつかの現地企業に投資したことを公表している。

  • 今後は中国に加えインドが大きく伸びることから、インドへの投資を積極的に進めるとしている

 ソフトバンクは国内で3大キャリアの一角を占め、安定した売上が得られる体制が実現できたからこそ、その利益を投資に回し、海外で攻める体制を実現できたともいえる。それだけに、これ以上大きな成長が得られないと踏んだとはいえ、国内事業に対する関心が日を追うごとに低くなっているのは、やはり気になるところだ。市場環境の変化で前期のように落ち込むケースも見られるだけに、足元をすくわれないための地盤固めが一層求められる。

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