ドコモまさかの3位転落、KDDIは2桁成長--明暗分かれた携帯3社の決算 - (page 2)

大幅増益のKDDI、ドコモのセット割には猛反発

　一方で、前期に続いて非常に好調な業績を発表したのがKDDIだ。KDDIはドコモと同日となる10月31日に決算を発表。売上高が前年同期比3.8％増の2兆1319億3500万円、営業利益が同10.7％増の3847億5400万円と、前期以上の増収増益を達成している。

KDDI代表取締役社長の田中孝司氏

　増収の要因はモバイル通信収入の増大で、461億円のプラスと売上を大きく押し上げている。通信ARPUを見ても、データ通信利用の伸びによって、前年比1.4％増の4280円と増加傾向にあり「通期でのARPU反転も見えてきた」と、同社代表取締役社長の田中孝司氏は話している。

　新料金プランへのシフトにアグレッシブなドコモと比べ、KDDIは当面旧料金プランの提供を継続すると明言するなど、新料金プランへのシフトにはかなり慎重だ。そうした両者の差が、今回の決算には大きく出たといえそうだ。

　またiPhone 6/6 Plusの商戦に関しても、初動では他社に番号ポータビリティ（MNP）で移動したユーザーが少なかったことも強調。iPhoneの顧客を守り、低い解約率を維持していることもアピールしていた。新しいiPhoneを発売初期に購入するユーザーは、データ通信を多く利用する傾向が強いことから、旧料金プランの存在も流出の歯止めに一定の影響があったと考えられよう。

　とはいうものの、新料金プランへの移行というのはKDDIにとっても今後大きな課題となってくる。実際、新料金プランに移行したユーザーが低料金のパケット定額サービスを選ぶ傾向は、KDDIも変わらない。田中氏は「カケホとデジラ」のパケット定額サービス選択比率について、5Gバイト以上のサービスを選んだユーザーが44％いると公表しているが、裏を返せば半数以上が2～3Gバイトのサービスの低容量サービスを選んでいることにもなる。データ通信を積極的に利用する人ほど新料金プランへの抵抗感が根強いだけに、業績を安定させつつも新料金プランへいかに軟着陸させるかが求められる。

　そしてもう1つ、KDDIにとって今後大きく影響してくると見られるのが、ドコモが「ドコモ光」でセット割を提供することだ。KDDIは光やケーブルなどの固定回線も自社で運用しており、「auスマートバリュー」でのセット割に最も力を入れているだけに、モバイルだけでなく固定通信の分野でも、その影響が決して小さくないことが予想される。

　それゆえ田中氏は、ドコモ光の提供、ひいてはNTT東西が光回線サービスの卸の実現に対し「NTT東西の卸によるセット割は脱法行為だと思ったが、（ドコモは）スタートすると発表した。これは一体何なんだろう？というのが本音。最低限透明性を確保しなければいけないという議論の最中にサービス開始を発表するのはいかがなものか」と話すなど、強く批判している。

　また今後の動向に関しては、最近人気となっている仮想移動体通信事業者（MVNO）で、KDDIのネットワークを利用する事業者を増やすために設立された「KDDIバリューイネーブラー」にも注目が集まるところだ。同社の設立によってMVNOを強化し、低価格指向のユーザーにもKDDIのネットワークを使ってもらう狙いがあるようだが、MVNOは“格安”として注目されているがゆえ、コストを少しでも抑えるためほとんどのMVNOは、卸価格が最も安価なドコモのネットワークを選んでいるのが現状だ。

　加えてKDDIは3Gのネットワークが他社と異なるため、利用できるデバイスが限られる、同社の回線を利用しているケイ・オプティコムの「mineo」がiOS 8デバイスで利用できなくなるトラブルが発生するなど、さまざまな問題を抱えているのも事実。そうした状況にありながらも、MVNO市場拡大に向けパートナーを順調に確保できるかどうか、手腕が問われるところだ。