「つながりを活かした買い物体験を提供したかったが、それがどのような形なのかは決まっていなかった。歩みを進める中で、頭にスッと現れた」――LINE上級執行役員 コマース・メディア担当の島村武志氏は、新戦略を打ち出したスマートフォン向けECサービス「LINE MALL」についてこう語る。今後はユーザー同士の“つながり”を活かして、商品との出会いの機会を増やすことで購入を促進する、LINEならではのECサービスを提供するという。
LINE MALLは、個人がスマートフォンで商品を撮影して販売価格を設定するだけで出品できるECサービスで、2013年12月にプレオープンした。企業の厳選された商品を販売する「LINE セール」なども人気で、現在約200万ユーザーに利用されているという。商品価格には送料も含まれており、購入者の居住地域の遠近に関わらず一律定額料金で配送できる。ただし、これまではLINEとの連携はしていなかった。
新たに発表されたサービスは、(1)LINEの複数の友人間で商品をまとめ買いすることで安価に購入できる「LINE グループ購入」、(2)LINEの友人に複数人でギフト商品を送れる「LINE ギフト」、(3)新鮮な野菜や魚介類を生産者から直接購入できる「LINE マルシェ」、(4)店舗展開するセレクトショップの商品を直接購入できる「LINE セレクト」、(5)工場と連携してクリエイターのハンドメイド商品を量産製造できるよう支援する「LINE クリエイターズモール」の5つだ。
従来のPC向けのECサービスは、購入者が商品を検索・比較して購入する「Pull Commerce(検索型EC)」が中心だが、ほしい商品が明確でなければ“出会う”ことは難しかった。一方、「LINE グループ購入」や「LINE ギフト」では、友人や家族から提案されて商品にたどり着くこともある。つまり、必ずしも自発的ではない形で新たな商品との出会える「Push Commerce(プッシュ型EC)」を可能にするという。
では、なぜLINE MALLは最初からLINEの“リアルグラフ”を活用してこなかったのか。また、個人間の売買(CtoC)に加えて、「LINE マルシェ」や「LINE セレクト」など、企業による個人への販売(BtoC)を可能にした狙いは何か。島村氏に聞いた。
正直そこの数字にはあまり注意を払っていません。これまでは、(新サービスの提供に向けて)仮説を立てて仕掛けたことがどれくらい実際の数字になって返ってくるかを、いろいろと実験する時期だったため、そもそものKPIが違いました。私の好きなF1で例えるなら最初から予選ではなく決勝を見据えてセッティングをしていたということです。
今回、LINEのつながりを活かしていくと大々的に発表しましたが、当初はただのCtoCアプリとして自由に使ってみてくださいという形で打ち出しました。また、LINE MALLではモールを目指しているので、交渉して値下げするといったフリマアプリのような使い方もできません。なので、(新サービスを開始するまで)全然勝負にならないと思っていたのですが、予想以上に使っていただいているというポジティブな驚きはありました。
まさに狙っているのはそこです。言葉で表現するのが難しいのですが、そうすると「総合的な仕上がり」がものすごく要求されるんです。この時には使えるけれど、この時には使えないとなった瞬間に本命視されないんですよ。やはりアパレルが好きな人だけじゃなくて、デジモノがほしい人もいるし、重いものだけネットで買っている人もいる。そういういろいろなニーズにしっかり答えることが大切で、それぞれのパフォーマンスレベルがお客様の期待を満たすものになっていないといけない。
これまでの検索型ECは、買うものが決まっていたり、価格を比較して安いところで買いたいという方には刺さっていました。けれど、そこの枠には入らない人が一定数以上いて、そこに対してこれまではどうにもならなかった世界じゃないですか。LINE MALLが狙っているのはそこなので、(従来のECモールとは)前提自体が違うということです。
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