LINEではこれまでデジタルで完結する事業を展開していましたが、ECは実際にものとお金が動くビジネスです。コンテンツは変動しますし、売り手と買い手がきちんとお金をやりとりできないといけない。正直、この仕組みを短期間に作るだけでもかなり大変なことです。私たちはECは初めてなのでそこをちゃんと作れるか、また出来たものが簡単でスマートフォンらしいかという実感を持てるかも分からない状態で、一度にすべてを進めることはできませんでした。
ただ、当初からLINEだからこそできるECをやりたいと思っていたので、つながりを活かした買い物ってあるよねという概念はあったのですが、それがどのような形なのかが最初から決まっていた訳ではありません。説明が難しいのですが、山を登るように1歩ずつ進めていたらどこかで頭にスッと現れたんですよ。
「LINE グループ購入」も漠然とは考えていたのですが、“共同購入”と言葉にした瞬間になんだかピンとこない、LINEぽくないなと。一方で、LINE MALLでは「LINE セール」の商品が本当によく売れていて、そこでフッと浮かんだんです。たとえば、この水をもっと集めてまとめて売れたらさらに安くできるけれど、それをセールでやるのは違う……それならグループ購入か!あ~つながったみたいな(笑)。そうすると同じ共同購入でも、パートナーに話すトーンが全然違って、そこからまた新たな案が生まれていきました。
やはりECは安ければいいというものではなく、すべてがユーズドでは嫌だという人もたくさんいます。なので、1つのプラットフォームでCtoCとBtoCという2つの価値観は共存できると思っています。ただ、何でもかんでも並んでいるとLINE MALLの目指す“出会い”が実現できない。そこで、グループで買えますよ、マルシェもありますよ、セレクトショップもありますよとコーナー化しました。その方が商品と出会いやすいし、使い方もイメージしやすいと思うんです。
これはLINEが実現したいと思っている価値の根本にある部分なのですが、「個と個の最大化」というものです。インターネットがこれだけ普及しているのに、これくらいの規模ならこういう流通に乗ってこう広がるという、既存のフレームワークが一部EC化しているだけですよね。ものが作れても、それを全国の人に見てもらうには卸や小売とつながらないといけない。ここを何とかしたいと考えました。
私には娘がいるのですが、教室で使う「マザーバッグ」は既製品よりも手作りの方が良いという人が多いそうなんです。でも自分で作るのは難しいし、可愛いものを作ってくれる人は人気で量産できない。また、クリエイターの方も同じものを10個も作っていくうちに作業になってしまい、ものづくりが楽しめない。私はここにハンドメイドの問題の源泉があると思っていました。
また、日本の工場では本当に良いものづくりができるのに、ブランドがすごく高いマージンを乗せて売っていますよね。5000円で作れるのに3万円で売るみたいな。この高い生産力でもっとできることがあるのではないかと思っていました。ただ、これまで工場では、どういうものを作ればニーズがあるかという部分はブランドに任せていたので、いきなりジーンズを作っても売れません。だったら、そこのニーズはLINEにあるもので補完できるのではないかと。
「LINE クリエイターズモール」は、オンラインの展示会です。LINEユーザーがバイヤーとなり、そこにサンプルを持ってきてもらう。もちろんそのサンプルを買うこともできますが、もっと注文が入るようなら工場をつないで量産して下さいということです。このモデルなら、いままでブレイクスルーできていなかったところを突破できます。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果