7~8月にかけて携帯主要3キャリアの4~6月期決算が出揃った。今期はKDDIが増収増益を維持する一方、一時益などがなくなったソフトバンクは増収減益、またNTTドコモは減収減益となった。ただし、各社の決算発表会をみるに、数字の増減からは見えない各社の変化もみてとることができる。
過熱したキャッシュバック競争が終わり、新料金プランの提供や、携帯電話のクーリングオフ、SIMロック解除の義務化が明らかになるなど、大きな動きが相次いだ4~6月期。今期の携帯キャリア各社の決算は、そうした動向を如実に反映したものといえるだろう。
最も不調ながら、3社で一番勢いを感じさせたのがドコモだ。同社は7月25日に連結業績を発表したが、その内容は営業収入が前年同期比3.4%減の1兆753億円、営業利益が13.7%減の1363億円と減収減益となっており、前年に続いて厳しい決算内容となっている。ちなみに減収の主な要因は、月々サポートの影響によるところが大きいようだ。
収入や利益だけをみると今期も厳しい内容にみえるが、他の数字に目を移すと、むしろ改善傾向に向かっているように感じる。純増数は前年同期比5倍以上となる46万件へと大幅に増加したほか、解約率も若年層の改善により、2013年第4四半期の1.00%から0.67%へと大幅に低下。さらに番号ポータビリティ(MNP)もマイナス9万件と、前年同期比で32万も減らしている。特にMNPに関しては、月を追うごとに大きく改善しているのが分かる。
契約に関する数字の改善に大きく影響しているとみられる要素の1つは、過熱していたキャッシュバック競争が3月で落ち着き、MNP利用者が減少したことで競争が停滞したことだ。それがMNPの影響を大きく受けていたドコモの数字改善に寄与したといえ、「MNPをプラスにするのも夢ではないが、そんなに簡単でもない」(ドコモ代表取締役社長の加藤薫氏)というのもまた確かなようだ。
そしてもう1つ、ドコモにとって大きなプラス材料となっているのが、新料金プランの「カケホーダイ&パケあえる」だ。6月に開始した同プランの契約数は、7月で600万を突破し、決算発表会の7月25日時点では601万6000件に達するなど非常に好調な滑り出しをみせている。新料金プランへ積極的に移行しているのは元々音声通話が多いユーザーであることから、音声ARPUはマイナス160円と低下しているが、純増数の増加への寄与や若年層の解約率低減、代理店手数料の減少など、多くのメリットをもたらしているようだ。
もっとも、競争の停滞が全てプラスに働いたわけではない。新規契約時にユーザーが増えることが多い「dマーケット」の契約数は746万と、前期と比べ23万契約減少している。1人当たりの利用料は拡大傾向にあるほか、新たに開始した「dマガジン」が開始1カ月で20万契約を獲得するなど好調をみせるサービスも出てきているが、多くのコンテンツが停滞傾向にあることから、新規契約に依存しないコンテンツの利用活性化施策が求められるだろう。
減収減益となる一方で、再成長に向けた基盤作りが着実に進んでいる印象を与えた決算となったが、もう1つ注目されるのは、NTT東西の光回線卸売による固定通信事業への参入と、モバイルと固定のセット契約による割引の提供だ。このことに関して加藤氏は、「(NTT東西の)条件が出たら、それを踏まえて検討する」と話すなど、参入に前向きな姿勢をみせている。
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