2013年に非常に好調な決算を示したKDDIは、今期も引き続き好調を維持している。7月30日に発表した連結業績における、同社の営業収入は前年同期比1.8%増の1兆205億円、営業利益は9.0%増の1947億円と増収増益を達成している。増収の要因はコア事業となるモバイル通信料収入の拡大で、前年比6.0%増の4291億円に達したことが大きいようだ。
通信ARPUも前年比1.7%増の4220円となり、通期でのARPU反転に一歩前進をみせている。また「auスマートパス」など付加価値の収入も、前年比20%の295億円と好調に推移しており、順調な様子をみてとることができる。
KDDIの代表取締役社長である田中孝司氏はかねてより、国内事業の成長はIDとARPUの拡大にあると話している。ID、すなわち契約数の拡大においては、LTEネットワークの拡大と、他社に先駆けて実現したキャリアアグリゲーションによる高速化、そしてUQコミュニケーションズのWiMAX 2+の利用など、基礎となるネットワークを強化することが重要との見解を示している。実際、LTEのエリアカバーは従来力を入れていた800MHzだけでなく、2.1GHz帯も6月末時点で人口カバー率90%を突破するなど、拡大に力を入れているのが分かる。
ARPUに関しては新料金プランの「カケホとデジラ」、そして新たにサービスを開始した電子マネーによる決済サービス「au WALLET」によるオフラインへの進出によって、収益の拡大を見込む考えのようだ。特にau WALLETに関しては、申込数が6月30日時点で300万契約を突破し、auスマートパスより早いペースでの会員獲得を実現するなど好調な伸びをみせている。
また海外での戦略に関しては、住友商事とミャンマー国営郵便・通信事業体との共同事業によるミャンマー市場への進出、そしてロンドンへのデータセンタ拡大が大きなトピックとして上げられている。特にミャンマーへの進出は、2013年よりKDDIが参入に向けて積極的に動きをみせていたものでもあり、念願かなっての進出であることから、かける期待も大きいようだ。
昨年に続いて好調な決算をみせるKDDIだが、足元では停滞気味な様子もみせる。その傾向の1つが、従来重要な指標としていたMNPの数字を、非公表にしたこと。ドコモがMNPで改善傾向にあることから、KDDIへのMNPによる流入は従来より減少していると考えられる。
その要因は、やはりキャッシュバックの抑制による競争の停滞だ。KDDIもドコモ同様、解約率は前期の1.18%から0.54%へと大きく下がっており、4月以降ユーザー数の変動が少なくなっている。加えて、端末購入時に契約することが多いauスマートパスの加入者が1070万と、3月に1000万を突破して以降ほとんど増えていないことが、そうした状況を証明しているといえよう。
3キャリアのiPhone販売とキャッシュバック抑制により、MNPでドコモからユーザーを奪って伸ばす従来の成功法則が難しくなったことに加え、NTT東西が光回線の卸売を始めるとしたことで、auスマートバリューの“セット割”で安定したユーザー獲得を続けていたKDDIの戦略にも逆風が吹き始めている。
実際、ドコモが光回線を販売することに関して、田中社長は「あんなことをしていいのかと思う。これ以上光回線に入る人がいない中、何をするかといえば我々やケイ・オプティコムやケーブルテレビから巻き取るということ。それでいいのか」と、強い警戒感を示す。NTT東西の動向が、KDDIの動向を左右する状況になってきたといえるのかもしれない。
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