最後に現在注目が集まっている、総務省の携帯電話クーリングオフと、SIMロック解除義務化の方針に関して、決算発表会の場で携帯キャリアのトップがそれぞれの考えを語っているので紹介したい。
すでに有料によるSIMロック解除を実現しているドコモの加藤氏は、「SIMロック解除の件数は3年間で20万件くらい。そのうち8割以上は海外のSIMを挿入して使われている」と、SIMロックを解除するユーザーの動向について話しており、回線を変更するためにSIMロックを解除するユーザーは少ないことを示している。その上で「従来通り(有料によるSIMロック解除)でいいんじゃないかと思うが、今は音声の部分が3Gなので通信方式が違う。ユーザーが混乱しない方策を考えなければいけない」と、他社がロックを解除した場合の問題について検討が必要とした。
3Gの通信方式が異なることからSIMロック解除を見送っているKDDIは、「まだ方向性ははっきりしていないので答えにくいが、それなりに対応していく。ただ3Gの方式が異なるので、流動性は低いのでは」と話す。一方で「それよりもMVNOが浸透する方が、主要3社以外の枠組み以外のものができるということで、大きな変化になる」と、SIMロック解除よりもMVNOの動向に警戒感を示しているようだ。
これまでSIMロック解除に否定的な見解を示してきたソフトバンクの孫氏は、「あって然るべきだと思っているが、方法論の問題。極端な形でやられると理にかなわない。iPhoneもSIMロックフリーのものが8万円程度で販売されているが、それよりもユーザーはSIMロックがかかった、無料のものを選んでいる。解除したい人が多くいるとは思えない」と話し、やはりSIMロック解除がユーザーニーズに合うとは考えにくいとの見解を示した。
一方、クーリングオフの導入に関しては、「店頭でクーリングオフが開始されると影響が大きいと懸念している」(加藤氏)、「相対でサービスやエリアに理解を求めた上で契約してもらっているだけに、難しい話。ユーザーに混乱がないよう、窓口での対応などを含め議論が必要」(田中氏)、「消費者保護の観点からは当然だが、方法論は細やかに詰めていくべき。ルールがガチガチなものになってしまうと販売ができなくなる」(孫氏)と、いずれの事業者もどのような形で導入がなされるかによって、販売店に大きな影響が出ることを懸念しているようだ。
総務省肝入りのSIMロック解除とクーリングオフの導入だが、ルールによってはキャリア各社だけでなく周辺産業、特に端末メーカーや販売店にも甚大な影響をもたらす可能性がある。それだけに、導入には慎重な検討と対応が求められるところだ。
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