2013年、米Sprintやガンホー・オンライン・エンターテインメント(ガンホー)、Supercellなどの買収で大幅な成長を遂げたソフトバンクだが、今期はその一時益の影響などによって利益が減少している。8月8日に発表された同社の連結業績を見ると、営業収入は前年同期比126%増の1兆9922億円だが、営業利益は16%減の3376億円となっている。
その理由として、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、前年同期にガンホーの子会社化に伴う一時益が含まれていたことを上げる。また純利益においても、前年比68.5%減の775億円となっているが、こちらもガンホーの一時益の影響に加え、今期は米国への上場を控えるアリババが発行した転換優先株の調整損を計上したことが影響していると説明。それら一時的な損益がなければ、営業利益は35%増、純利益は90%増と、堅調に伸びていると孫氏は強調していた。
ただ、そうした一時的要素を抜きにしても、同社の主力事業となる国内のモバイル事業には足元に弱さがみえる。決算短信を見ると、移動通信事業は端末卸売のBrightstarやゲームのSupercell、ウィルコム(現・ワイモバイル)の子会社化によって売上は伸びているものの、ソフトバンクモバイルは端末の出荷台数が減少したことで、減収となっている。
同社のARPUも音声収入の減少により、4280円と前年同期比で180円減となっているほか、解約率も競合他社が軒並み低下する中、1.11%と上昇している。ちなみに解約率の上昇は、2年契約の満期を迎えた非音声端末の解約が増加したことによるもので、キャッシュバック競争後の競争停滞によって、同社の弱みが出てきたといえそうだ。
従来“ナンバーワン”であることを強調してきた純増数や、MNPの数も今回は発表されていない。この点について孫氏は「M2M機器やMVNOなど、大きな利益が出ないものも純増数のカウントに含まれている。みまもりケータイやフォトビジョンも1つというように数えられ、純増数の意味が“形骸化”していると感じていた」と話しているが、これまで純増数をアピール材料として積極活用してきた同社だけに、額面通りには受け取り難い。純増数は引き続き1位を記録しているようだが、MNPが不調であった可能性も考えられよう。
もう1つ注目されているのが米国の携帯電話事業、すなわちSprintの動向だ。Sprintの営業利益は長く赤字が続いていたが、経営改善などでようやく黒字化を達成。同社の不満要素となっていたネットワーク品質も改善が進み競合他社に追いつくレベルに達したことから、今後は“一人負け”が続く状況を改善するべく、営業面での攻勢を強めていくとしている。
そのためSprintの新CEOとして、ソフトバンクが2013年に出資したBrightstarのCEOを務めるマルセロ・クラウレ氏を起用することを発表。同時にソフトバンクは、Brightstarに100%出資して子会社化することも発表している。
Sprint単独による再建を進める施策を打ち出したソフトバンク。同社は米国4位の携帯キャリアT-Mobile USを買収する動きを進めていたものの、米国の規制当局の認可が出ない可能性が高いことから、買収を見送る方針を決めたと、いくつかの報道機関が伝えている。このことに対して孫氏は「コメントはしない」としながらも、「米国市場がより健全で激しい競争をもたらすには、2強より3強の方が良いと基本的に思っている」と話しており、買収を完全に諦めたわけではないようだ。
主力の国内携帯電話事業の足元が不調となりつつあるのに加え、T-Mobile USの買収を断念するなど米国事業も精彩を欠いており、勢いがやや失われている今期のソフトバンク。同社が得意とする新iPhoneの発売などで回復基調に乗せられるかが注目されるところだが、一方で最近急速に力を入れ始めたロボット事業の動向なども、今後の注目要素となっていきそうだ。
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