朝日インタラクティブが6月19日に開催した「CNET Japan Live 2014 Summer あらゆるモノがつながる世界~IoTが起こす新ビジネスイノベーション~」。基調講演第2部では、IoTの分野で実際にビジネスを展開する4人のパネリストが、IoTの今とこれからについて語り合った。
参加したのは、リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部 執行役員CTOの米谷修氏と、ABBALab 代表取締役の小笠原治氏、日本マイクロソフト 本部長 技術統括室である田丸健三郎氏だ。モデレーターを務めたのは、野村総合研究所 IT基盤イノベーション事業本部 上級研究員の城田真琴氏とCNET Japan 編集長の別井貴志だ。
すべてのモノがインターネットにつながっていくことでいろいろモノの価値や働きが再定義される中、広い意味でのIoTを捉えた場合に期待するインパクトはなにか。
ABBALab 代表取締役として、プロトタイプへの投資を行っている小笠原氏は、「ソフト、ハードの領域からいろいろな変化が起きており、気が付いたらものすごいインパクトになっているのではないか。パッと一瞬で変化するインパクトではなく、徐々に自然と変わっていくのではないか」と話す。
IoTのプラットフォーム提供事業者でもある日本マイクロソフトの田丸氏は、「これまでは無意識に蓄積し、資産として持っていたデータを活用するということから、センサを通じてこれまでは考えてもいなかった情報を“取りに行く”という方向に変わっていくと思う。センサが付いているというのがスタンダードで、データとセンサとが相互に連携できる世界を標準の環境として考えなければならない」。
コンテンツサプライヤー側の立場として、考えを述べたのは、リクルートテクノロジーズの米谷氏だ。「ウェブの上での行動を分析してレコメンドしていくのがこれまでの世界。それがIoTの世界になると、取得できるデータが単純に増える。例えば、GPSデータを通じてリアルタイム性やサービスの質という面で、革命的に変えられるのではないか」と話した。
このようにパネリストらが語るIoTのインパクトから共通して言えるポイントの1つが、今まで取得できなかったデータを活用できることだ。しかし「そのデータを自由に使うにあたっては、超えるべき壁があるのではないか?」と疑問を投げかけたのが、モデレーター役のCNET Japan編集長の別井だ。
これに対し「これまでになかったデータというところでいうと、その一例が環境データ。特に農業分野のデータは有用だ。ただし、大事な点はそれをどのように扱っていくか。IoTが進めば進むほど、プライバシーとの境界線が難しくなってくるはず。個人情報に関係してしまうようなデータを、どのようにマネタイズしたり、活用したりしていけるのか。法制度を含めたさまざまな課題が現状では残されていると思う」と日本マイクロソフトの田丸氏。
また、経済産業省のパーソナルデータワーキンググループで委員を務めていた、野村総合研究所の城田氏は「“ビッグデータ”という文脈の話だとまさに個人情報になってしまうが、IoTに関しては対象はモノ。個人情報保護法に触れるものは少ないだろうというのは当時の委員会でも見解が一致していた」と明かす。
ただし「モノは人が所有しているので個人情報は避けては通れない問題。そこで問われるのはセンス。例えばGPS情報をもとにタイムリーにクーポンが届いたとき『気味が悪い』と思われるか、『便利』と思われるかは送り手次第。実際に消費者がどう思うか?を第一に考えなければならない」と、サービスを提供する事業者側のセンスが重要であるという課題を示した。
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