アップルの新プログラミング言語「Swift」--その目的と意味するところ - (page 4)

Tim Stevens (CNET News) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子2014年06月17日 07時30分

すぐに思い浮かぶメリット

 アプリの記述と同時に、すぐさま、かつ簡単にテストできるという能力によって、開発者らは複雑なアプリをより迅速に開発できる可能性を手にする。コンパイルやテストといったプロセスは、大規模アプリの場合にはとても手がかかる可能性もある。Swiftがこうしたプロセスに大きな改善をもたらせるのであれば(実際に大きな改善が期待できる)、開発者はより徹底的にテストしたアプリをより短期間でリリースできるようになるはずだ。

 さらに言えば、Swiftは非常に簡潔なプログラミング言語でもある。SwiftはPythonと同様に、複雑なことを実行する際でも多くのコードを記述しなくても済むようになっている。この点もアプリの開発速度の向上につながるはずだ。

 最後に、SwiftがObjective-Cよりも高速に実行できるアプリを開発できると証明できた場合、今後さらに素晴らしいグラフィックスのゲームが登場するとともに(Appleの「Metal」APIという新しいテクノロジも活用することになる)、新しく携帯電話を買い換えなくても、他のカテゴリのアプリでも応答性がより高まるはずだ。

すぐに思い浮かぶ懸念

 良い話ばかりではなく、すぐに浮かんでくる懸念もある。これについては、筆者が話をした数人の開発者も同じ意見だ。その懸念は、まったく新しい言語を学習する必要があるというところにある。プログラマーは最新かつ最高の技術を身に付けることに喜びを感じるのが普通だ。その一方で、「iPhone」アプリの開発手法を教えるという業界が既に確立されている。しかしその業界は、Swiftの登場を機にすべてが実質的に無用となってしまうのだ(Objective-Cのアプリを開発し続けるという選択肢ももちろんあるが、そうしたいと思う人はいなくなるはずだ)。

 もう1つの懸念は、さほど大きいわけではないが、学習が容易で簡単に使えるプログラミング言語によって参入障壁が低くなり、未熟な開発者の手による粗悪なアプリが増えるというものだ。こういったことは十分考えられるうえ、その可能性も高いとさえ言えるが、同様の話は1940年代に最初のプログラミング言語が登場して以来続いているソフトウェア開発の進歩の中で常に持ち上がっている。パンチカードを使っていない人間はアマチュアだと考えている人間が世界のどこかに存在しているはずだ。

「Hello, world」までの道のり

 長々と書いてきたが、Swiftが宣伝通りの言語であれば、もうすぐより高速で安定性に優れたアプリが登場するはずだ。

 今までと同様に、この手の話はすべて、自らが使ってみなければその真偽は分からない。Appleは特定の製品が他社のものよりも優れていると示すためにベンチマークや統計を利用する場合も多いが、新しいプログラミング言語といった革新的な変更についてこのような比較を行うのはずっと難しい。メリットを実感するにはそれなりの時間がかかるはずだ。また、これは革新的な変更であり、Appleが「App Store」を立ち上げて以来、同社の開発者コミュニティーにもたらされた最大の変更と言えるだろう。

 さらにこれは、コンシューマーの目にはほとんど触れない変更であるため、これ以上のことは語れない。しかし現在でも、少なくともそれがなぜわくわくする価値があるのかについては友人に説明できるはずだ。


提供:Tim Stevens/CNET

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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