服や雑貨を取り扱う大手セレクトショップ「BEAMS(ビームス)」は、顧客がウェブを介してショップスタッフに“贈り物に関する相談”ができる「ギフトコンシェルジュ」という取り組みを、2013年11月から進めている。現場とウェブをつなげることで生まれるものとは。宣伝販促に携わるビームス クリエイティブ WEB制作課の関根修二氏、郡山祐亮氏に聞いた。
BEAMSによる“ギフト相談”の第1弾は、2013年のクリスマスにあわせたものだった。「店舗のスタッフは、お客様からの相談を受けてそれに答えることのプロフェッショナル」と関根氏。この施策はそのスキルから着想を得た。「クリスマスキャンペーン当時に、店舗での相談をクリスマスギフトに特化させようという動きがあった。そこで、店舗でそういうことに取り組むことをウェブで告知しようとなり、ウェブでも相談を受け付けようという話になった」(関根氏)。
ウェブサイトからの相談には、専用のシステムを構築して対応した。サイトに寄せられた質問を、まずWEB制作課などの管理者がまとめ、どのスタッフにどの相談を担当させるかを振り分けた。その後、スタッフは自分のIDでシステムにログインし、回答を入力。その内容が管理者に戻されると、管理者が相談者に回答メールを返信するとともに、ウェブサイトに掲載するコンテンツを作成した。
受け付けた相談は、2週間で1日平均20件、多い日は1日80件あったという。関根氏と郡山氏が当初予想していたのは「恋人へのプレゼントは何がいいか」などの短文でシンプルな相談内容だった。しかし実際には、ギフトをあげたい理由などが書き添えられたものが多く、恋人だけでなく子どもや両親に宛てたギフトの相談も多数あったという。「相談内容の一つひとつにストーリーがあり、その背景を想像するとホロっとくることもあった」(郡山氏)。なお、冷やかしのような相談は1件も無かったそうだ。
この施策により、売上は“多少”伸びた。多く人がウェブサイトでの相談を経てECサイトにアクセスし、商品を購入したという。「一人ひとりに対し相談内容に合った商品を3点ずつ紹介していたので、額としてはそう伸びなかった。ただし、コンバージョン率は格段に上がった。すでにBEAMSを知っている人には“丁寧に接客していること”を訴求できたと思うし、ライトユーザーにはショップのファンになってもらえるような良い体験を提供できたと思う」(関根氏)。
実際、相談への回答を返してからお礼のメールをもらうこともあったという。中でも、ショップに訪れたことがなかった人から「今度行ってみます」とのメールもらった時などは、実店舗での接客業務の合間を縫って回答を作成していたスタッフ達のモチベーションも上がったそうだ。
「この業種は売上を気にするだけではなくて、ファンをつくることが重要。いま買ってもらえなくても後々買ってもらえるようなタッチポイントをつくることが必要だと思っている」(関根氏)。
母の日のギフト相談キャンペーンを経て、現在は6月15日の「父の日」に合わせて3度目の取り組みを実施中だ。前述したギフト相談を特設サイトで受け付けているほか、強化店舗には専用コーナーを作り、ゲーム性のあるギフト紹介ツールを搭載したiPadを客と店員とのコミュニケーションツールとして置いている。
「iPadはあくまでもコミュケーションのきっかけ」と関根氏。ギフトとして最適なものを選ぶのは、ショップスタッフによる提案に任せているという。
BEAMSはこれまで、早期からスタッフのスタイリングを毎日ウェブで紹介したり、お笑い芸人の鉄拳とコラボレーションしたパラパラ漫画のムービーで話題を作ったりと積極的なウェブ展開を見せてきた。今後はこのギフト相談のほかにも、iOS・AndroidアプリにiBeaconなどを活用した機能も組み込み、集客やコミュニケーション用ツールとして使うことなどを考えているそうだ。
「デジタル戦略として、大手のアパレル関連サービスにあわせることも1つの選択肢としてあるが、そうするとフォーマットもデザインも個性がなくなってしまう。特にアパレルは個性が重要。これからも独自のものを考えていきたい」(関根氏)。
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