ユニクロが5月19日に発表したオリジナルTシャツを作成できるサービス「UTme!(ユーティーミー)」の利用規約が修正された。サービス開始直後から、利用規約に「(一部抜粋)投稿データについて、その著作物に関する全ての権利を、投稿その他送信時に、当社に対し、無償で譲渡します」と、著作権を放棄するような記述があるとして物議を醸していたが、これが明確に「投稿データの著作権はユーザーに帰属する」との内容に変更された。
今回の事例に対し、法律相談サイト「弁護士ドットコム」代表の元榮太一郎弁護士は「著作権を譲渡するということは、基本的に問題ない」としながらも、「著作権法の中にある著作者人格権は譲渡できない」と指摘。ユニクロの利用規約の変更については「適切な対応なのではないか」とコメントした。
UTme!は、Tシャツのプリントを自分好みにデザインできるアプリ。アプリ内で指で描いた絵や撮影した写真を使い、モザイクや、インクを飛び散らせたような加工ができる。加工時にスマートフォンを振ることで、その強弱により加工具合が変化する。できあがったTシャツは、XS~XLのサイズから1枚1990円(送料、税別)で注文できる。
話題となっていた主な箇所は、第9条の3「ユーザーは、投稿データについて、その著作物に関する全ての権利(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含みます)を、投稿その他送信時に、当社に対し、無償で譲渡します」と、第9条の4「ユーザーは、当社及び当社から権利を承継しまたは許諾された者に対して著作者人格権を行使しないことに同意するものとします」など。
同社ではこれを受けて利用規約を修正。ただし、これらの記述に本来どのような意図があり、ネットで挙がっていたような、ユーザーのデザインをそのまま商品として販売する意思はあったのかなどの疑問に対しては、広報部から明確な回答は得られなかった。
ユニクロが当初掲載していた規約、またその後の修正対応に対し、弁護士ドットコム代表の元榮氏は見解を次のように述べている。
「著作権を譲渡するということは、基本的に問題ない。著作権という権利は、財産的に価値がある権利で、一般的な物の売買と同様に、譲渡をすることが可能だからだ(著作権法61条1項)。
ただし、著作権法の中には、著作者人格権という権利があり、この権利は譲渡することができない。例えば、著作物を公表する権利や、著作物に自分の名前を表示させる権利などがこれに該当する。そのため、ユニクロの利用規約でも、『著作者人格権を行使しない』という内容の記述があり、ユーザーがこの著作者人格権を行使しないようになっている。
このように、著作権の譲渡は基本的に可能だが、デザインを投稿したのが一般消費者である場合には、著作権譲渡の規定が無効となる可能性がある。なぜなら、事業者と消費者との間で結ばれた契約について『消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする』と消費者契約法10条で定められているからだ。簡単にいえば、ユーザーに一方的に不利な内容の合意は無効であるということ。実際に無効になるかどうかというのは個別具体的な事情によるが、『著作権を無償で譲渡する』という内容は、著作権者であったユーザーが著作権を失うことになり、消費者に一方的に不利なものであるとして無効になる可能性も考えられる。
ただ、どちらにしても、本件ではすでにユニクロが利用規約を変更しており、これは適切な対応なのではないか。この利用規約を見た方の中には、『ユニクロがユーザーからデザインの著作権をタダで取得して、そのデザインを使って商品を製作販売し、利益を得ようとしているのではないか』と考える方がいると思う。そして、ユニクロが消費者を利用して儲けようとしているということが噂で広まれば、ユニクロの企業イメージが損なわれて評判が下がり、大きな損失となる可能性がある。実際にユニクロがどのような意図で利用規約を変更したかは分からないので推測にはなるが、ユニクロとしては、そのような“負のイメージ”が広まることを恐れて、早急に利用規約を変更するという方法で対応したのではないだろうか」。
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