不動産情報サイト「HOME'S」を運営するネクストは、2011年12月にインドネシアに進出。現地企業と合弁で子会社「PT. Rumah Media」を設立した。そして、2012年9月から国内の不動産物件情報を提供するウェブサイト「RumahRumah(ルーマールーマー)」を運営している。
ネクストはグループの中期経営戦略の柱として、「データベース+コミュニケーション&コンシェルジュサービスでグローバルカンパニーを目指す」をスローガンに掲げ、日本国内にとどまらず世界各国の不動産情報を多言語で閲覧できるサービスの提供を目指している。インドネシアへの進出はその一環で、ASEANではタイに続いて2カ国目となる。
そこで今回は、PT. Rumah MediaのCOOである加藤年紀氏に、インドネシア市場の概況と戦略、現地ビジネスならではの苦労と克服について話を聞いた。
ネクストが行っている投資の対象は今でも日本国内が最も多いという。しかし、これから日本の市場がシュリンクしていくリスクを鑑み、アジアをはじめとする海外展開を強化している。中でもインドネシアに注目した理由は、同国の大きな人口規模と、携帯電話の普及台数の伸び。携帯電話が普及し多くの国民がインターネットを利用するようになってきたが、その一方で不動産に限らずウェブのメディアの数が少ないことに勝機を見出したという。
「Rumah」はインドネシア語で「家」という意味。サイトの主な機能は日本のそれと変わらず、物件のタイプや地域、価格、その他のキーワードを入力して、購入・賃貸できるものを検索できる。サイト内では物件を管理する不動産会社への問い合わせが可能。エリアは国内全域を網羅しており、物件を掲載している代理店は200以上、物件数はその時々で増減するが平均2000~3000件。広告課金モデルで、代理店が物件を掲載するために費用を支払っているという。
インドネシアでは、地方に行けば店を構える代理店や人とのつながりで物件を探す人が多いが、ジャカルタなどの都市近郊ではネットで不動産を検索することは一般化しているという。最近では、PCからモバイルに移行しており、PCからのサイト訪問者が7割、スマホからが3割となっている。サムスン製の1万円台の低価格スマートフォンが売られていることが、それを後押ししているそうだ。
サイトへの集客施策はリスティング広告も出稿しているが、日本と比べてFacebook広告を多用している。インドネシアで暮らす人々は、日本のユーザーよりも広告を「バンバン押す」(加藤氏)からだという。感覚的には、「日本の不動産サイトにおけるソーシャルメディアからの流入率は5%もいかないが、こちら(インドネシア)では2桁はいく。10%は固く、競合サイトの中には30%ほどのところもある」そうだ。
競合にあたるサービスとして、現地企業が運営するものは少ないが、外資系のサービスはネクストが参入する前からいくつかあったという。例えば、マレーシア系のiPropertyが運営する「Rumah123」。シンガポール系で「PropertyGuru」を持つAllProperty Mediaの子会社が運営する「Rumah.com」など。機能や体験的にはRumahRumahと変わらないが、ユーザー数の規模は約10倍と加藤氏は推測している。
こうした状況に対して加藤氏はまず、掲載する物件やその詳細な情報、さらに地域ごとの家賃相場といった周辺情報も含め、サイト内に掲載するコンテンツの拡大に注力していくと話す。これには1つ、インドネシアならではの懸念点もある。同国で最大の不動産情報サイトRumah123には平均25万件の物件情報が掲載されているという。しかし、各物件に関する情報の掲載期間は3カ月と非常に長く設定されており、ユーザーが問い合わせたときには、すでに締め切られているような不親切な情報も含まれているそうだ。
「この状況は昔の日本もそうだった」(加藤氏)というが、日本の場合は業界団体などがそれを是正してきた。しかしインドネシアではそうした対応はいまだ行われていない。そのような状況で、物件を管理する代理店にもっと短期間で物件の状況を確認し更新してくれと頼むのも現実的ではない。
このような状況がはびこるうちに、サイトの情報に対するユーザーからの信憑性が薄れてしまうのではと同氏は懸念する。そのため、同社では掲載期間を短く区切り、少しでも情報がリフレッシュされた状態を保つようにしている。その上で、競合するサイトに劣らないコンテンツ量を目指すとしている。
ちなみに、4月にはインドネシアで暮らす日本人向けに、日本語で情報を閲覧できるサイトも公開した。インドネシアに居住する方は参考にしてみてはいかがだろうか。
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