榎原氏 : 1つは、「インドネシアはジャングル」だとよく言われます。何が潜んでいるか分からないという意味です。インドネシアのマーケットに精通しているひとのサポートは必要不可欠でしょう。
2つめは、この国に合わせたビジネスができるかということ。日本から進出してくると、日本本社の思いや戦略が強く、日本でうまく展開している商品やサービスを持ってくればそのまま売れるだろうという考えで事業を行う会社が多い。しかし、ローカライズが重要です。弊社がアドネットワーク事業からデジタルエージェンシー事業に舵を切ったのはまさにその典型でした。また、育児情報サイトも現地で採用したインドネシア人の社員と議論する中で生まれたものです。
そして3つめ。「タイムマシン経営」という言葉がありますが、日本で10年前に流行したウェブサービスをこの国にあてはめても、うまくいくとは限りません。今はグローバルで情報が広がっているため、欧米企業が展開するサービスの存在はこちらでもすでに広く知られており、またスマートフォン、タブレットなど最新のデバイスも普及しています。さらに、インドネシアならではの生活スタイルや消費行動もあるので、それらを深く観察し、進出前の予想と外れていたら修正していく必要があるでしょう。
最後は、現地で採用した従業員の給与。日本と比較して格段に安い人件費を期待して進出してくる企業がいますが、24~25歳のマネジャー職で月給10~15万円ぐらいのレンジがネット業界では当たり前になってきています。決して格安ではありません。日系企業も含めて外資企業が引き上げているのです。
Suryanto氏 : 榎原さんの話にもありましたが、成功するために大事なことは、商品やサービスをインドネシア向けにローカライズすること。マイクロアドの場合、エージェンシー事業の顧客ターゲットを広告代理店ではなく、事業会社との直取引に絞りました。
もう1つは、最初に派遣される人の選定が大事だということです。榎原さんには前職のサイバーエージェントで培ったデジタルエージェンシー事業に関する経験とノウハウがありました。英語が上手いということだけではなく、むしろ実務に優れていることの方が重要です。またこちらで優秀な人材を見つけることも大切です。
失敗の要因は、まず合弁会社の設立の段階で組むべきパートナー企業の選択を見誤ること。資本の大きさ以外の面でも企業を見極める必要があります。また実務においては、従業員のリテンションです。インドネシア人は人前で物事を素直に言わない人が多いため、ミスコミュニケーションが起こり職場を去っていくことが少なくありません。そうして優秀な人材が定着するまでに、会社のお金がなくなっていきますので注意が必要でしょう。
Suryanto氏 : もちろん。2014年は大統領選挙がありますが、誰が大統領になっても経済の好調は変わらないでしょう。
榎原氏 : 私も、これからも成長は続いていくと確信しています。インフラの不足もこれから国が豊かになると同時に解決されていくでしょうし、多少の不調でもそれを補って余る人口やビジネスのサイズがあります。しかし、日系企業としてこの国に進出すべきかは分野によると思います。そしてもし進出するならば、腰を据えてやらなければなりません。
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