5月12日、東京の六本木ミッドタウンホールにて、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボと朝日新聞社によるシンポジウム「メディアが未来を変えるには ~伝える技術、伝わる力~」が開催された。
朝日新聞とMITメディアラボによる、メディアをテーマにした共同シンポジウムは、2013年6月の開催に続く2回目だ。今回は“データジャーナリズム”が全体の大きな話題となった。シンポジウムにはメディアラボの伊藤穣一所長をはじめ、ニューヨーク・タイムズのグラフィックエディターであるアマンダ・コックス氏や、ザ・ハフィントン・ポスト プロダクト部門統括責任者のニコ・ピットニー氏が登壇した。ここではその前半をご紹介する。
冒頭のあいさつで朝日新聞社 代表取締役社長の木村伊量氏は、「ニュースはシェフのおまかせ料理からアラカルトをチョイスする時代に入った」とコメント。記者が素材を集めて記事として料理し、新聞という皿にのせて提供する以外に、読者が直接読みたい記事を自ら選んで読むスタイルが広がっていると説明する。
紙かデジタルかという二者択一的な発想も終わりを迎え、「新しいテクノロジを利用した新しい伝え方が必要になる」と述べた。2013年のシンポジウムで木村社長は、新聞をはじめとするマスメディアは伝えることで社会貢献をめざすと語った。その考え方は時代が変わっても変わらないが、手段は変わる必要があり、変化をやわらかく受け入れ、すべての人に意味のあるメディアに生まれ変わる必要があり、その思いはますます強くなるばかりだと話す。
朝日新聞では、新しい発信手法も積極的に取り入れている。その一つとして、フィギュアスケートの浅田真央選手を取り上げた朝日デジタルのラストダンスを紹介した。浅田選手の足跡を数々のデータを元に、ウェブならではの手法でまとめた記事として、ソチオリンピックの女子シングルの試合終了翌日に公開され、7万以上もシェアされたという。
朝日新聞が参画するハフィントンポスト日本版も、月間ユニークユーザー数が1千万を越えたことから、ニュースとブログによる投稿へ読者が直接コメントする報道スタイルも認知されつつあるとする。他にもユニークな取り組みとしては、朝日新聞メディアラボがGoogle Glass向けに「朝日新聞AIR」というサービスを実験的に配信している。また、3月には国内メディア初のデータジャーナリズムハッカソンを開催し、記者がデータ分析やデザイン、ウェブ制作といったさまざまなスキルを持つ専門家と共同で報道制作に取り組む試みを行っている。
会場では、そのハッカソンでグランプリに選ばれた「データで透明化する医療」
発表を見たMITメディアラボ所長の伊藤穣一氏は、「データジャーナリズムを越えた作品になっている」とコメント。市民が社会を変えるために積極的に行動することを英語ではシビックス(civics)と言い、本作品は自分で病院を“選ぶ”というアクションにもつなげられる点を高く評価した。また、伊藤氏は、報道はその時に伝えるだけで終わってしまうが、市民がコミュニティを通じて役に立つ情報を発信し続けるという活動にも意義が出てくるとし、そうした活動を行うNPOが日本でも登場してもいいのではないかともコメントした。
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