携帯キャリア主要3社の2013年度決算が出揃った。KDDI、ソフトバンクが大幅な増収増益を達成する一方で、NTTドコモは減収減益となるなど明暗が分かれる形となったが、今後に関しては別の側面も見えてくる。それぞれの決算内容から、各社が抱える課題と、それに対処するため、どのような取り組みをしようとしているのか確認していこう。
ゴールデンウィークを挟む形で、3社の2013年度決算が発表された。その先陣を切って発表会を実施したのは、NTTドコモだ。同社は2013年、サムスンの「GALAXY S4」とソニーモバイルの「Xperia A」のによる“ツートップ戦略”やiPhoneの導入など、スマートフォン端末に関する方針を大きく変えたことで話題となったが、決算の内容はかなり厳しいものだった。
実際、同社の2013年度決算は、営業収益が前年度比0.2%減の4兆4612億円、営業利益は前年度比2.1%減の8192億円。通期目標に届かず減収減益となるなど、かなり苦戦している。その大きな要因はスマートフォン販売数が1378万台と、目標の1620万台に達しなかったこと。2013年9月にiPhoneを導入したことで後半は急速に持ち直してきているが、発売当初の在庫不足などが響いてその効果も限定的だったようだ。
そしてもう1つは、顧客獲得コストの拡大。MNP(携帯電話番号ポータビリティ)利用者に対するキャッシュバック競争の過熱によって販売費が増加しただけでなく、解約率も1%に達するなど大幅に上昇。ここ数年続いたiPhone急拡大の波に乗り遅れた一方で、競争激化の影響を大きく受けたことが、減収要因につながったといえそうだ。
さらにネガティブなトピックとして発表されたのが、インドの携帯電話事業からの撤退だ。NTTドコモは2009年、インドのタタ・テレサービシズに出資し、インドの携帯電話市場開拓に乗り出した。だが競争激化でARPU(1契約あたりの月間売上高)が急速に下がったことに加え、汚職により通信行政が混乱。一度分配された電波が取り上げられたため再獲得にかかるコスト負担が増加した。「想定していたものではなかった」(NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏)事象によって、当初予定の営業利益が未達となったことから、撤退を決めたようだ。
2012年度に続き2期連続の減益となったことに加え、インド市場で成果を上げられず撤退という結果を招いたことから、NTTドコモは経営責任として取締役と執行役員の賞与を減額すると発表。一方で2014年度に向けては、「一度しゃがんで再び成長に戻す」(加藤氏)べく、回復のための基盤作りを進めるようだ。
具体的な取り組みの1つとしては、他社に先駆けて導入した新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」、そして夏から導入される高品質な通話サービス「VoLTE(ボルテ)」が上げられる。加藤氏によると、特に新料金プランはiPhone導入に次ぐ反響があったとのこと。音声通話需要の拡大やパケットシェアによる複数台利用の促進、キャッシュバックに依存しない長期利用者への優遇などによって、顧客満足度を高めつつ収益を上げる取り組みを進めたいようだ。
そしてもう1つの取り組みが、高速通信ネットワークの拡大だ。2014年度は設備投資をLTEに集中することで、LTE対応基地局を1.7倍に、下り最大100Mbps以上対応の基地局も10倍に拡大するとしている。また、KDDIが先行して導入したLTE-Advancedに関しても、NTTドコモはさらなる高速化を実現するべく、下り最大225Mbpsでのサービスを2014年度中にスタートしたいとしている。
他にもNTTドコモは、「dマーケット」など新事業領域の拡大や、グループ企業の再編など事業構造改革も進めていくとのこと。しかし、料金プランの影響などもあって、2014年度の営業収益は4兆5900億円、営業利益7500億円の増収減益と予想するなど、厳しい状況は続く見通しだ。特に純増数に関しては、加藤氏が「チャレンジングな数字だ」と話している通り、2013年度の157万の倍以上となる370万もの数字を設定するなど、目標達成には厳しさもうかがえる。そうした困難な状況を乗り越えて、再成長に向けた基盤を整えられるかどうかに、まずは注目が集まるだろう。
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