NTTドコモとは対照的に好調なのが、4月30日に決算発表をしたKDDIだ。同社の2013年度(2014年3月期)の決算を見ると、営業収益が前年比18.3%増の4兆3336億円、営業利益は前年比29.4%増の6632億円となっており、営業収益は初の4兆円超えを達成するなど大幅な増収増益となっている。
KDDI代表取締役社長の田中孝司氏によると、ARPUとID、つまり毎月の通信料と獲得ユーザー数が成長に大きくつながるとしており、この2つが順調に拡大したことが2013年度の大きな成長に影響したといえる。実際、同社の純増数は281万に達し、スマートフォンの割合もほぼ半数となる49%にまで達した。長い間下がり続けていた通信ARPUも、第4四半期には前年比90円アップの4120円と、ついに反転基調に達している。
スマートフォンに出遅れたことで競争力を落としていたKDDIは、2012年より事業基盤を立て直し、固定回線とのセット割やiPhoneの導入を実現するなどして再び成長軌道に乗せることに成功。その成果が2012年度より大きく現れるようになり、現在は“収穫期”が訪れているといえそうだ。
だが、最近まで同社の成長を支えてきたMNPによるスマートフォンユーザーの獲得も、他社との競争過熱によって高額なキャッシュバックが飛び交う料金競争に陥り、批判の声を集め自粛に向かっていることから、これまでのような拡大施策をとる訳にはいかないだろう。また田中氏も「スマートフォンの販売は、前年より1割強近く落ちている」と話しており、スマートフォンの新規利用者が従来より落ちてきているなど、足元では市場環境に大きな変化が起きている。
そうした中でKDDIは、次の成長に向けてどのような取り組みをしているのだろうか。1つはユーザー数の拡大に向けて、スマートフォンだけでなくタブレットやTVなど、複数デバイスの利用につなげる“マルチデバイス化”を進める方針のようだ。そしてもう1つは、既存ユーザーに向けた価値を高め、ARPUを向上させる施策だ。具体的には、5月8日に発表された電子マネーカードサービス「au WALLET」がそうだろう。
一方でKDDIは、LTE-Advancedの要素技術「キャリアアグリゲーション」の導入による高速化など、高速通信インフラ面での取り組みも引き続き重視していく方針のようだ。田中氏によると「3Gは終焉に近づいていると認識している。LTEを維持できないエリアを減らしていく」と話しており、すでに800MHz帯で実人口カバー率99%を達成しているエリアカバー施策を、一層強化するとしている。もっとも、その背景にはVoLTEの導入、さらに言えば、3Gの通信方式が主流のW-CDMAではないため、インフラ・端末の調達面で不利になりがちな現状を、LTEへの一本化で解消したい狙いもあるといえそうだ。
こうした施策によってKDDIは、2014年度には営業収益6%増の4兆6000億円、営業利益10%増の7300億円を目指している。この数字を達成できれば、売上、利益ともにNTTドコモに肉薄することとなるだけに、こちらも注目されるところだ。
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