「FuelBand」の開発終了が意味するもの--ナイキの思惑をめぐるアナリストの見解

Nick Statt (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2014年04月25日 07時30分

 過去10年間のほとんどの期間、Nikeは2つの異なるイメージをうまくやりくりしてきた。一方では、同社は伝統的なスポーツウェアメーカーであり続け、需要の大きいスポーツシューズや衣料品のおかげで、現在では年250億ドル超を売り上げている。他方では「FuelBand」によって、不確実ながらも希望が持てるウェアラブルテクノロジ市場において、Appleのような開拓者の地位を確立してきた。

 同社は長い間、1つのイメージがもう一方を隠してしまうことを拒んでおり、最先端を行きつつも、中核となっているビジネスの戦略の重要性を軽視することはないという印象を与えてきた。

 ただし、Nikeという企業のDNAはそれほど分断されているわけではなさそうだ。NikeがFuelBandの開発チームの大部分を解雇したという先週のニュース(米国時間4月18日に米CNETが最初に報じた)によって、手首装着型のフィットネストラッカーが、Nikeの製品ラインアップから逸脱しつつあることが明らかになった。

 FuelBandが見込み通りのものにはならなかったのか、あるいは単に目的を失ったのか、いずれにしてもNikeはその部門を切り捨てて、別の方向へ成長しようとしている。それはFitbitやJawbone、Withings、Garminのようなハードウェア中心のウェアラブルデバイスメーカーには取れない動きだ。それはまた、何よりもまずスポーツウェアメーカーであるNikeが、実現性のあるビジネス成長の手段として、テクノロジハードウェア以外の道を考えている証拠である。

 その道の先には、Appleという天使がいるのかもしれない。

 時計やスマートフォンがフィットネストラッカー機能を搭載しているため、フィットネストラッカー市場は不確かなものになっている。そのような状況でNikeは、いまだに「iPhone」としか連携しない150ドルのデバイスをさらに開発する必要はないように思える。結局のところ、シューズを売ること、そして、顧客とより強固な関係を築くことは、現在あるデバイスと、今後登場するデバイスの両方を対象としたモバイルアプリ「Nike+」で十分だ。

 Credit SuisseのアナリストでNikeの事情に詳しいChristian Buss氏は、「消費者向け電子機器の利幅は一般に、衣料品やフットウェアよりも低いことが知られている。Nikeが消費者向け電子機器のためのインフラストラクチャやサプライチェーンを持たないことを考えると、同社がその事業から撤退するというのは、私にとってそれほど大きな驚きではない」と述べている。

 誤解のないように言うと、Nikeは4年前に立ち上げた、テクノロジ重視のDigital Sport部門を閉鎖しようとしているわけではないし、「FuelBand SE」の販売中止のような思い切った行動を取ろうとしているのでもない。Nikeは先週、2013年11月に発売されたFuelBandの第2世代は引き続き販売され、アプリケーションのサポートも「当分の間」行われる予定であり、新しいカラーも追加されると述べている。

 しかし、Nikeの事情に詳しいある人物が米CNETに語ったところによると、同社は将来のウェアラブルハードウェア(2014年秋発売予定のさらにスリム化したFuelBandも含む)の開発を担当していた55名ものエンジニアやそのほかのハードウェアや製造分野の専門家を解雇したという。また、そうしたウェアラブルガジェットを作り続ける具体的な計画がない一方で、NikeはNike+のソフトウェアに力を集中しようとしている。

 「それは、同社がそうした製品で利益を上げるのに苦労していたことを示すものであり、ソフトウェアの道を進むことによって、同社は資本投資と、そうした市場への継続的な投資を最小限に抑えることが可能になるだろう」(Buss氏)

figure_1
提供:Sarah Tew/CNET

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]