NikeはFuelBandの各モデルの売れ行きに関する数字を一度も公表していない。NPD Groupの推定によると、ウェアラブルフィットネストラッカー市場の規模は2013年時点で3億3000万ドル程度であり、主にJawbone、Fitbit、Nikeが競争の中心になっている。市場をリードしているのはFitbitで、実店舗と大手オンライン小売業者での売り上げの67%を占めている。一方、FuelBandのシェアは10%だ。そこから考えると、Nikeの売上高はたったの3300万ドルだ。
しかし同社のハードウェア開発チームの人員を削減するという決定は、利益の問題ではなかった可能性がある(FuelBandがNikeの業績に大きな影響を及ぼす製品だとは思われていたことはない)。重要だったのは、FuelBandがNikeのブランドに何をもたらすか、そしてAppleとGoogleの頂上決戦において、それがどんな役割を果たしたかということだったと、アナリストらは語っている。
NikeのDigital Sport部門の内部で実際に何が起こっているのかは明らかではないものの(同社はまだ、ハードウェアへの取り組みの段階的な縮小を公式に認めていない)、1つだけ確かなことがある。Nikeはテクノロジを少し扱っているスポーツウェアメーカーであって、その逆ではないということだ。
Stern, Agee & LeachのNike担当アナリストであるSam Poser氏は、「テクノロジは目的達成のための手段だ」と語る。「テクノロジのためのテクノロジではない。重要なのは、『ブランド力を強化し、顧客体験を向上させるためには、何ができるだろうか』ということだ」(Poser氏)
「彼ら(Nike)はテクノロジ企業ではない」とPoser氏は付け加えた。
むしろ最近の大企業のほとんどでそうであるように、テクノロジは、企業拡大のためのツールキットに不可欠な存在だ。それはNikeにとっても実に素晴らしい働きをしてきた。同社は2006年以降、年間売上高を約70%増加させている。その年には、Mark Parker氏が最高経営責任者(CEO)に着任し、「Nike+ iPod」がAppleのウェブサイトで販売されるようになっている。その1年前には、AppleのCEOのTim Cook氏がNikeの取締役に就任しており、今でもその職にある。
Wedbush SecuritiesのNike担当アナリストのCorinna Freedman氏は次のように語る。「それはひとえにわれわれが暮らす世界の影響だと思われる。テクノロジは、サーモスタット、スニーカー、コートなど、身の回りのあらゆる製品で使われるようになってきている。彼ら(Nike)が時間や金を無駄にしたとは思わない。彼らはまさに最先端だったと思う」
FuelBandは、テクノロジが関連する一面でNike自身をスポーツの中心的存在に変えるために同社が実施する数多くのイニシアチブにおいて、アスリートにリーチするための1つの方法に過ぎなかった。FuelBandが大ヒット商品にならなかったことは、完全なる製品の失敗というよりも、ウェアラブルハードウェアの先行きが見通せない状況にあって、Nikeがそれをあきらめることができなかったということ、またNikeがウェアラブルハードウェアとの関わりを維持したいのであれば、必ずしもあきらめる必要はないことを示している。
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