アドビ システムズは4月15日、クラウド型ウェブマーケティング支援ツール「Adobe Marketing Cloud」のソリューションファミリーに、「Adobe Target Standard」を加えたことを発表した。米国では2013年10月よりすでに販売しており、今回日本向けに新たに提供することになる。
従来からあるAdobe Targetの一部機能のUIなどを刷新し、ウェブ制作者とマーケティング担当者らが情報を共有しながらウェブサイトを改善できる機能を備えたのが特徴。Adobe Targetを置き換えるものではなく、今後も併売される。料金体系はAdobe Targetで採用されている従量制ではなくページビューベースとなった。
同日行われた「Adobe Target Standard」の発表会の冒頭では、同社マーケティング本部 デジタルマーケティング プロダクトマーケティングマネージャーである国和徳之氏氏が、3月26日に米国で開催された「Adobe Summit 2014」をはじめ、ここ最近の同社の活動を紹介した。
2013年6月に買収したクロスチャネルのキャンペーン管理技術をもつフランスのNeolaneの技術により、「Adobe Campaign」をAdobe Marketing Cloudに統合。同社はAdobe Marketing Cloud内の各ソリューションの連携やアセットの共有を実現する“コアサービス”を実装したほか、ウェブコンテンツを管理する「Adobe Experience Manager」のメジャーアップデート、モバイルコンテンツ管理のための「Adobe Mobile services」の拡充など、矢継ぎ早に新しいサービスをリリースしてきている。
今回発表されたAdobe Target Standardは、Adobe Marketing Cloudが内包するコンテンツ管理やキャンペーン管理のツールと、分析ツール「Adobe Analytics」との間に位置する、ウェブの最適化に用いられるソリューションとなる。「訪問者にパーソナライズされたコンテンツをタイムリーに出していく」(マーケティングクラウドプロダクトマネジメント本部 シニアプロダクトマネージャー兼エバンジェリストの上原 正太郎氏)ためのものだ。
Adobe Marketing Cloudには、もともとAdobe Targetというソリューションが含まれているが、新しいAdobe Target Standardはそのうちの“ABテスティング”、“ルールベースのターゲティング”、“位置情報によるターゲティング”、“モバイルターゲティング”の4つの機能に絞り、よりわかりやすいグラフィカルなUIに刷新している。
UIの変更により技術的な知識の少ないマーケティング担当者でも簡単に扱えるようになったとしたほか、複数用意したウェブページ全体もしくは一部のデザインパターンについてABテストする際などに、何%の訪問者をどちらのデザインにアクセスさせるか、どんな属性の訪問者に対してどの時間帯でテストするか、といった設定も容易に行えるようにしたという。テスト結果はリアルタイムに表示され、すぐに次の改善策を検討し実施できるのがポイントだ。
また、制作チームとマーケティングチームとで、実施したテストの内容や結果をオンラインで共有し、実施結果を元にどのようなページデザインにするか、あるいは分析の手法をどう変えるか、といったコミュニケーションを行えるようにもなった。
これらの機能の実装により、ウェブを分析してはいるが、いきなりデザインを変更すると訪問者が減ってしまうのではないかと危惧する企業においても、一部の訪問者に対してのみテストすることで、そうしたリスクの軽減につなげられる。「異なる属性の訪問者に正しいタイミングで正しいコンテンツを見せることで、機会損失を回避し、売上を拡大できる」(上原氏)ことにも結びつくとした。
さらに、Adobe AnalyticsとAdobe Target Standardの両方を利用している企業に対しては、モバイルアプリ上でもアプリユーザーの属性に応じたコンテンツの出し分けなどが可能になるサービスを提供する。たとえばモバイル端末の位置情報を活用し、ユーザーが特定の店舗を訪れた際に、その店舗でのみ有効なキャンペーンオファーを提示するといった利用方法が考えられる。その後Adobe Analyticsを用いてアプリ内でのユーザーの行動を分析することによってアプリ自体を改善するなど、「一歩進んだアプリ戦略を実現できる」(上原氏)とした。
マーケティング本部 デジタルマーケティング プロダクトマーケティングマネージャーの前田龍氏は、Adobe Target Standardのデモンストレーションを披露。シンプルなデザインの管理画面上で、ターゲティングやABテストなどに必要な設定をすばやく行い、テスト結果もすぐに確認できるといった点をアピールした。
他社の調査によれば、オンラインの小売りウェブサイトの売上上位500社において、Adobe Targetを利用しているウェブサイトのコンバージョンレートが他より平均して1%以上高い、と前田氏。2%以上のコンバージョンレートを達成しているウェブサイトのうち、Adobe Targetを利用しているウェブサイトの数は、他社製品を使っているウェブサイトより約20%多いとするアドビ独自の調査結果も示した。
従来からあるAdobe Targetの方が機能は多いものの、それに対しAdobe Target Standardは使いやすさを追求し機能を絞った形になっており、リアルタイムの分析機能もあることから、さまざまなマーケティング施策を「より早く回すのに向いている」と前田氏は強調した。
そして、「すべてのマーケターがコンテンツ最適化のプロフェッショナルになるためのツール」であるとともに、テストが簡易になることであらゆる立場の人が使い込み、「最適化の領域を広げてビジネスの成果を得ることができる」と力を込めた。
なお、従来のAdobe Targetではテストする箇所やテスト回数ごとの従量課金制となっていたが、Adobe Target Standardでは料金体系が改められ、ウェブサイトの年間ページビュー数を元に費用を見積もる形になった。Adobe TargetにあってAdobe Target Standardにないいくつかの機能については、2014年内にリリースされるという「次世代バージョン」で、別の製品として提供される予定とのことだ。
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