NTTグループの規制を巡りキャリア各社が舌戦--2020-ICT基盤特別部会 - (page 2)

FTTH回線の利用促進に関する議論が白熱

 ヒアリングに続いて、政策委員から各社に対する質疑応答が実施された。NTTグループの規制緩和に対して、“ゼロイチ”の議論では多数決になってしまうことから、どこまで許せるかという問いに対し、田中氏は「問題は一体化運営と市場シェア。上位レイヤーで規制緩和をすればNTTと一体化してしまうし、グーグルやアマゾンなどの大きな事業者と排他的な契約をするのも問題がある。何がよくて何が悪いのか、議論すべきだ」と答えた。

 これに対し吉澤氏は「上位レイヤーの動きはとても早く、半年、1年後にはどうなっているか分からない。どうなるか分からないものの良し悪しを分類することで、グローバル競争に追いつくことはできない。そこは自由なコラボレーションで新しい価値を作ることが重要であり、規制の撤廃をした上での事後規制で十分だと考える」と反論した。

  • 会場ではNTTグループの規制のあり方や、FTTHの貸し出し方法について激しい議論がなされた

 また、FTTHの利用が進んでいないことについて、孫氏は「国が筆頭株主であるNTT(東西)が、8回線ごとでないと貸さないというのは、がめつすぎるのではないか。新幹線に乗るのに、8人まとめてでないと乗せないというアンフェアなことはない。英国のよう監視機関を設け、設備部門と利用部門を一体運営しないよう、ルールを作る必要がある。そうすればADSLの時のように参入事業者が相次いで利用が活性化し、NTT東西のシェアも(規制緩和を考慮できる)40%を切るくらいになる」と話し、光の道構想の際の持論を再び訴えかけた。

 これに対し篠原氏は、「光の道の時も議論したが、8回線での貸し出しとなっているのは、メタルと光とで方式が違っているため。1本の波を8つに分けて使用しているため、1つを貸し出した場合残りの7つを誰が負担するのか、というモラルハザードが起きる。また1本ずつ貸し出した場合、サービスが均一化して独自性が発揮されなくなる問題も抱えてしまう。利活用の活性化は接続料金だけでなく、教育や医療、行政を含め効率的な使い方をいかに提案していくかが必要だ」と反論する。

 ここで孫氏が「我慢ならない」とさらに反論しようとするも、田中氏が「ちょっと先に言わせて」と間に入る一幕があった。その上で田中氏は「我々は日本のため、電力系の通信事業者を買収するなどして固定回線を始めたが、NTTの価格競争についていけないのが現状。モバイルのキャッシュバックが問題となっているが、NTT東西は固定回線で10万円近いキャッシュバック施策をやっていて、競争環境がすごく厳しい。これ以上値下げが続くなら、設備投資が厳しくNTT以外の固定事業者は食べていけなくなる。固定通信の設備競争がなくなっていいのか」と、固定通信事業を展開している企業ならではの現状と問題点について指摘した。

 また、最近注目されるMVNOの活性化について何が求められるかという質問に対し、吉澤氏は「MVNOはMNOが提供し得ないサービスが提供できることが重要だが、日本では接続約款に基づく同一接続義務があり、卸もそこに引っ張られてしまう。しかも我々は、不当差別してはいけないという規制があるので、提供する料金も同じなってしまう。我々は卸が基本だと思うし、多彩なサービスができるよう接続義務も撤廃の方向が望ましい」と答えた。

 これに対し田中氏は、「シェアに応じて接続料が変わる計算ルールが決まっており、NTTドコモが安い料金設定になっているため、ほとんどのMVNOがNTTドコモのSIMを使っているのが現実。なので今の接続約款よりさらに安い、NTTドコモ相対の卸をやられると、全てNTTドコモに持っていかれてしまう」と話し、NTTドコモに課せられた接続義務の維持を訴えた。

 一方孫氏は、「MVNOもいずれは、無線、有線、サービスのトリプルプレイが必要になってくるし、そうすれば固定回線の利活用も進んで、成長路線に持っていける。その時に8回線貸しでないといけないというのは、やはり改めないといけない」と、MVNO活性化にもNTT東西の固定回線解放が必要とした。

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