NTTグループの規制を巡りキャリア各社が舌戦--2020-ICT基盤特別部会

 総務省の情報通信審議会は4月15日、2020年代に向けた情報通信政策のあり方を議論する「2020-ICT基盤政策特別部会 基本政策委員会」の第4回を開催した。NTTやNTTドコモのほか、KDDIやソフトバンクといった国内の主要通信キャリアの代表が登壇する公開ヒアリングで、大きな争点となっているNTTグループの規制緩和に関して、各社が激しい舌戦を繰り広げた。

事後規制を訴えるNTT、規制撤廃を警戒するライバル

 公開ヒアリングではまず、NTTの常務取締役 研究企画部門長の篠原弘道氏が登壇し、2020年代のICTに求められる用件は3つあると説明した。1つ目は、災害やトラフィックに対処でき、多様な機器が利用できる柔軟で堅牢な通信基盤を提供すること。2つ目は、サイバー攻撃の素早い検知や対処、そして匿名化技術やインテリジェント暗号などによる攻めと守りのセキュリティ基盤。3つ目は、異業種間のクラウドを連携することでサービスや製品への新しい導線を生み出すなど、業界をまたいだ新しいビジネスを支援することだという。

  • NTTの篠原氏

 その上で篠原氏は、これからのICT産業はさまざまな分野と掛け合わせて新しい価値を生み出すB2B2Cの取り組みが重要になると説明。政策に対しても同様に、B2B2Cの取り組みがしやすくなるよう、自由なコラボレーションによるイノベーションを促す政策や、グローバルスタンダードとの整合性などと共に、事前規制ではなく、原則自由な取り組みができる事後規制へと、規制のあり方を変えるべきとの意見を出した。

 続いて、NTTドコモの取締役常務執行役員 経営企画部長である吉澤和弘氏が登壇。2020年代にはデバイスも多様化し、プレーヤーやユーザー体験も大きく変化すると説明するが、一方で課題になるのが、2010年と比べ1000倍を超えると予測されるトラフィックの増大だという。そこで安定した通信を提供するのがNTTドコモの課題とし、LTE-Advancedや5Gなどの研究についてアピールした。

  • NTTドコモの吉澤氏

 現在、モバイルに関しては成熟期にあり、パイの取り合いとなって健全でない競争も生まれていると分析するが、今後は競争軸がサービスに移ると吉澤氏は予測。ネットワークだけでなく、OTT(Over The Top)などさまざまなプレーヤーと連携することで、グローバルなサービス間の競争になっていくとしている。そこでNTTドコモとしては、グローバルかつ多様な連携ができ、さまざまなパートナーの要望に応える上でも、NTTと同様に事前規制から原則自由な事後規制を求めたいと話した。

 3番目に登壇したのは、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏。田中氏はICTが実現する2020年代の社会として、ありとあらゆるものがインターネットに接続する“Connectivity”、4K、8Kなど超高精細映像を超高速の通信インフラで実現する“Ultra High Quality Video”、そしてセンシング技術とビッグデータを活用し、安心・安全な生活をサポートする“Sensor Network”の3つを挙げた。

  • KDDIの田中氏

 さらに2020年代のICT基盤について、田中氏は世界最高水準の高速、低廉、強靭なネットワークを維持し、かつ現在遅れている創造的ICTの利活用を官民一体で進める必要があると説く。だがネットワーク面に関しては、4G、5Gの導入で基地局コストが大幅に伸びるほか、災害に備えるためにもNTT以外のネットワークを用いた冗長化が不可欠と話し、コストダウンのために競争促進が必要と話している。

 その上で田中氏は、FTTHでNTT東西が圧倒的なシェアを占める状況のまま、規制を緩和することは、国が3分の1以上の出資をしているNTTグループの独占回帰につながり、設備の技術革新やコストダウンなど、さまざまな面で大きな弊害をもたらすと指摘。設備競争を阻害しないルール作りの議論が必要と訴えた。

  • ソフトバンクの孫氏

 ヒアリングの最後に登壇した、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、2020年の東京五輪に向けて、停滞している経済を、ICTを中心として再生していくべきだと話す。その頃には超高速通信、クラウド・ビッグデータ、そしてそれを利用できるデバイスが3種の神器となってICT化を加速し、生活を大きく変えていくと説明するが、そのためには利便性の高いモバイルと、安定して高速通信ができる固定回線を相互に補完することが重要とした。

 一方でこれからの課題となるのは、急増するデータトラフィックへの対応、そして新規産業創出になるとし、これらについては他社と意見はおおむね一致しているという。しかし、これらの課題解決をする上で、NTT1社に依存するのはいかがなものかと孫氏は訴える。その理由として2010年の「光の道」構想の時の議論を引き合いに出し、FTTHの整備率は全国98%にまで広がったものの、利用率は48%と大きくかい離している状況だと説明。FTTHの普及が進まない要因は、FTTHがADSLのように1回線ではなく、8回線単位での貸し出しとなっていることから後発の事業者が不利であるためとして、1回線ごとの貸し出しの実現を訴えた。

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