日本人と比べて、フィリピン人のエンジニアは「勉強に飢えている」(野口氏)という。日本は書籍やネットなどでゲーム開発に関する情報を手に入れやすい。一方でフィリピンには、他人に教育できるベテランの開発者が少ないためそうした情報源が不足しており、また勉強の仕方自体を知らないエンジニアもいるという。向上心はあってもそれを活かす方法が分からない状況だそうだ。
だからこそ、「スポンジのように吸収する」とも野口氏は語る。教育係のエンジニアの指導は素直に受け入れ、さらに“会社”よりも“人”に愛着が湧いて、その人に付くようになるそうだ。そうした現地採用スタッフを結束させようとする場合、現地採用の「中間管理職」スタッフの存在も重要になってくる。ここで難しいのは、会社の事業に関する売り上げなど具体的な金額について、彼らに対して全ては明かせないことだという。なぜなら、日本人とリビングコストが異なる現地採用スタッフに対して情報を開示することは、時として彼らの士気低下を招くことがあるからだそうだ。
そこで同社では、スタッフには会社のビジョンと目的を伝えて、共感を持ってもらうようにしているという。また、フィリピンの企業には年功序列の制度が残っているところがあるが、Cyscorpionsではそれを一切排除し、優秀な人材に機会と責任を与えるようにしている。
こうして「2012年は規模を積極的に拡大し、2013年は組織として安定させる1年だった」(野口氏)が、2014年は「優秀なエンジニアが1人で数人分の活躍ができる、そんな筋肉質な組織にしたい」(同氏)という。2011年にKLabの子会社になったこともあり、より高度な技術と質の高い成果を求められるようになったCyscorpions。それを実現するために雇用を積極化し、教育にも投資し、組織を作り上げてきた。
仕組みが構築され中間層が育った、もしくは育つ道筋がついたいま、投資から収穫のフェーズに移ったと野口氏は考えている。そのため、再度今までのプロセスを見直し、無駄を省き、稼げる組織にしたいという思いから“筋肉質な組織”という目標を掲げている。
その一環として実施しているのが、Cyscorpions独自のゲーム開発だ。最新のゲーム事例を米国などから学び、現地採用のエンジニアたちが自らゲームを企画。社内で企画のコンペティションをして、勝ち残った企画のゲームを選抜されたチームで開発する。Unityを使ってiOS、Android OS向けのゲームを開発するそうだ。ローンチしたゲームはダウンロード数などの指標を設定し運用される。この取り組みにより「エンジニアのモチベーションを高めながら、将来的には独自の収益源を作っていきたい」(野口氏)という。
さらに信賞必罰を明確化し、社員ひとりひとりの能力や貢献度なども把握していく。今後は、従業員に自分の評価のランキングを告知することも検討しているという。相対的な評価を入れることで競争を煽り、切磋琢磨させたいと考えているからだ。日本的な長期雇用や社員教育、福利厚生を残しながら、欧米的な成果主義を導入する。そのため、給与体系も変動させるという。
Cyscorpionsでは2014年内に、現在の170人から250人まで社員数を拡大させる予定だ。人件費が安価ながらも優秀なエンジニアの基盤を構築し、引き続きKLab再起の足固めをしていく。
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