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KLab再起に向けて--フィリピン拠点「Cyscorpions」の足固め

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 2013年12月期は25億円の最終赤字に転落し、役員報酬や従業員数削減などの構造改革を発表したKLab。そんな不振にあえぐ同社をゲーム開発という根幹部分で支えているのが、フィリピンの拠点「KLab Cyscorpions(クラブサイスコーピオンズ)」(Cyscorpions)だ。

 KLabが国内外拠点の縮小を進める中、この拠点はむしろ今後も拡大路線を掲げている。Cyscorpionsはこれまでどのような取り組みを進めてきたのか。そして今後はどのようにしてKLabの立て直しを支えるのか。同社の代表取締役社長であり、KLab本体の取締役執行役員でもある野口太郎氏に話を聞いた。


KLab Cyscorpions代表取締役社長の野口太郎氏

英語が堪能な現地人材を欧米企業から勝ち取る策

 Cyscorpionsは野口氏が2007年にフィリピンで立ち上げたオフショア開発の会社を、KLabが2011年に買収する形で誕生した。その主な役割は日本と北米向けのゲームの開発と運用。現在170人の従業員がおり、そのうち150人は現地採用スタッフで構成されている。

 野口氏が特に注力してきたのが、質の高いゲームを開発できる人材の“採用”だ。しかしフィリピンで日系企業が優秀なエンジニアを獲得し、また定着させるのは容易なことではない。

  • 就業時間後のオフィスの風景。数人の従業員が自主的に残って作業をしていた

 その理由は2つある。1つは、フィリピン人は英語が堪能であることだ。フィリピンは英語が公用語であるために、多くの人が英語を使って仕事ができる。英語が堪能であることは海外向けのゲームも開発するKLabにとって追い風ではあるが、同時に欧米企業と人材獲得で競争しなければならないことも意味する。同国では、欧米企業と比べて日系企業の知名度は低く、さらに給与水準も低い。そのため、あえて日系企業で働こうとする人材はそう多くはないのだ。

 もう1つの理由が、フィリピンにおけるエンジニアの層の薄さだ。同国は目下、IT人材の育成に力を入れており、情報系の大学や専門学校が増えているという。しかし、Cyscorpionsが取り組むスマートフォン向けのゲーム開発は新しい領域であるため、大学を卒業した人が即戦力になるかといえばそうではない。つまり優秀な人材は自社で育てなければならないのだ。

 しかし、そうして育った人材は欧米企業の目に留まり、高い給与水準で引き抜かれていく。素質のある人材を採用し育成できたとしても、定着させられるとは限らない非常に厳しい競争環境なのだ。そこで、Cyscorpionsでは地元の大学と連携している。大学主催の就職セミナーや学生主体の研究イベントなどを積極的にスポンサードし、優秀な学生を早い段階から囲い込むのだという。

 また、福利厚生も充実させている。入社して3カ月以降はスマートフォンを貸与し、勤続年数が2年を超えるとプレゼントする。独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)によると、フィリピンで非製造業に携わる現場スタッフの平均基本給は月額365米ドル。彼らにとってスマートフォンはおよそ給与1カ月分の贅沢品なのだ。

  • 日本語研修の様子

 さらに、オフィスでの朝食やランチは無料。スマートフォンの通信料も負担するなど、従業員が金銭や未整備のインフラの状況に支障をきたされることなく、仕事に専念できる環境を整えている。取材でオフィスを訪れた際に実施していた日本語研修もユニークな制度の1つだ。

 充実した社内制度は魅力的だが、入社するまでの選考、そして入社した後の教育プロセスは非常にシビア。採用試験では、IQ(知能指数)、EQ(情動の知能指数)、数学のテストを実施し、それらをクリアした人のみが複数回におよぶ面接試験を受けることになる。

 晴れて入社した従業員は、初めの3~6カ月間は開発の現場ではなく、「トレーニングセンター」と呼ばれる研修のための部署に配属される。

  • トレーニングセンター

 ここでゲーム開発に関するいろはから、データベースの使い方や開発言語といった専門的な内容まで講座形式で学び、ペーパーテストで都度習熟度を試される。このテストで2回連続して落第点を取ってしまうと、なんと即解雇。ゲーム開発を学びたい人にとっては、給料をもらいながらKLabのノウハウを学べる素晴らしい環境だが、当然のことながら真剣さが求められる。

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