テクノロジ業界でまたしても、人間のエクスペリエンスの将来を方向付ける可能性のある、衝撃的な発表がなされた。
Facebookは、仮想現実テクノロジの先駆けであるOculus VRを20億ドルで買収することに合意し、米国時間3月25日に発表した。この買収は、Facebookがこれまで実施した買収の中でも間違いなく最も影響力の大きいものになるだろう。その影響は仮想現実(VR)テクノロジ市場全体におよび、さらにそれを越えて、今は概念的にしか考えられないパーソナルコンピューティングの最先端にまで到達することになるだろう。
人々がこの買収を批判するのには理由がある。Oculusはオープンソースの世界で注目を集める存在であり、Kickstarterで資金を得たスタートアップ企業だ。さらにゲームの世界では輝かしい指導者のような存在で、悪いことなどしそうもない。一方で、巨大企業がすることはなんであれ厳しい反発を受ける。Facebookのような、プライバシー保護を避けて通っているらしいソーシャルネットワークの巨頭ならなおさらだ。「Minecraft」のクリエーターで「Notch」の通称を持つMarkus Persson氏は、最も強く批判している1人だ。
買収に関する発表の直後にPersson氏は、個人ブログの「Virtual reality is going to change the world」(仮想現実は世界を変える)という記事に、「私はFacebookによる買収に向けて価値を高めるために、第1回投資ラウンドのシード資金として1万ドルを寄付したのではない」と書き、MinecraftのOculus対応VRポートの開発をキャンセルしたことを明らかにした。Kickstarter暴落の問題(Oculusには基本的に寄付として240万ドルが支払われたが、それは、10万%近く価値が跳ね上がる可能性を持っていたものに対してだった)はまた別の話であり、個別に考えるに値する。
しかし、これは単にFacebookとOculusだけの問題ではなく、ゲームだけの問題でもない。米CNETのJennifer Van Grove記者が解説しているように、Facebookが大胆な賭けの対象としたのは、仮想現実が現実世界と同じくらいリアルに感じられる(そして感覚投影を通してスムーズに体験できる)、まさにSFのような未来だ。
Oculusが仮想現実分野で傑出した存在であり続ければ、Facebookにとってこの買収は素晴らしいものだ。しかしそれ以上に、仮想現実テクノロジのメインストリームでの応用にとって、この買収は重要だ。いずれにせよ仮想現実は登場しただろう。そして今、このテクノロジは力を増し、市場は多様性を深め、分野全体がこれまで以上に加速しようとしている。
Oculusの共同創設者で最高経営責任者(CEO)のBrendan Iribe氏はThe Vergeに次のように語った。「われわれはロケットであり、さらに大きなロケットと結合されたところだ。このロケットを打ち上げ、世界により優れた仮想現実のエクスペリエンスをもたらそうとしている」
歴史的な買収が起こるとしばしば繰り返される話題は、「XはXから何を得られるか」という形で表現されることが多い。今回の場合、FacebookとOculusの両方が互いから多大な恩恵を受けることは明白だ。
Oculusが味方にしたのは、Googleと比べれば漠然としているものの、同じぐらい高尚な目標を持つ、テクノロジ業界の怪物である。FacebookのCEOであるMark Zuckerberg氏は、「あらゆる人をつなぐ、世界を理解する、知識経済を構築する」という同社の目標を、機械のように復唱するのを喜びとしている。
Oculusはそれを信じ込んでいる。Oculusの公式声明には、「Facebookは仮想現実の可能性を理解している。Markと彼のチームは、仮想現実には学びや共有、遊び、コミュニケーションの方法を変える可能性があるというわれわれのビジョンを共有している。このパートナーシップの締結は、仮想現実にとって最も重要な瞬間の1つだ。それはわれわれにとって、真に世界を変える上での最大の力となる」と書かれている。この公式声明には、Oculusのクリエーターで共同創設者のPalmer Luckey氏、Iribe氏、そしてJohn Carmack氏が署名している。業界の伝説的存在であるCarmack氏は「Doom」のクリエーターで、2013年にOculusに加わった。
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