NPOマーケティング研究所の代表として、これまでこのコラムでは、NPOセクターの動向を紹介しながら、企業経営やマーケティングに活用できるヒントや新たな視座をお伝えしてきた。
今回のコラムでは、本業である、企業人としての視点から、常日頃感じていることを書いてみたい。
本業では、コンシューマ向け製品のマーケティングを行っているが、イベント業務に携わることがある。
イベントを実施する側と協賛する側の両方だ。前者はさらに、主催もあれば他社主催イベントへの出展というかたちもある。
業種業界にもよるが、企業におけるイベントの主たる目的は、新製品の発売に伴う販売促進をはじめ、ブランディング、リードの獲得、情報収集など多岐にわたる。
それでは、NPOにとってイベントはどういう意味を持っているのだろうか?企業以上に重要な意味を持っているというのが私の考えだ。
その理由は、NPOの活動内容はそもそも目に見えにくく、当事者意識を持ちづらいケースが多いため、イベントの中でスタッフが直接説明したり、質問に答えたりすることで、相手の理解を深めることができるからだ。
さらに、NPOに関わる人の最大の武器ともいえる「熱意」や「想い」を Face to Face で伝えられる。
また、ボランティアを活用することで費用を低く抑えられる点、イベント自体がそもそもメディアに取り上げられやすい点や、イベントの様子がソーシャルメディアで拡散されることで広告価値をもたらす点など、費用面でのメリットも多い。
こうしたイベントを介して企業がNPOと協業するケースとしては、NPO主催イベントでの講演やイベントへの協賛などが挙げられる。
前者はイベントの目的が企業の理念や戦略と合っていれば、社内のどの部門のどのレベルの人が講演するのかを調整するくらいで、参加自体への大きな障害はないだろう。
一方、後者の協賛のうち、会場の提供などではなく協賛金を捻出する場合、事前に計画されたものでなければ企業側でお金の工面が必要となる。
また、コーズマーケティングの社会浸透により、企業に対するNPO側のアプローチも以前と比べて盛んになってきているため、NPOとの協業が自社にとって有益かどうかを判断するのに時間もかかるようになっている。
こうした状況を踏まえ、企業がNPO主催のイベントに協賛する際のポイントとして、以下の3つを提示したい。
まず何より、協賛はビジネス上の意思決定の一つであり、慈善精神だけに基づくものであってはならないということだ。
イベント自体の社会的価値に加え、本業との関連性などもきちんとおさえたうえで、本当にバリューを生み出す協業を行わなければならない。
2つ目としては、NPOの意図が何かを正確に確認しておくことだ。自社の名前、つまりネームバリューが必要とされているのか、またそれによりイベントの集客数やイベント経由の会員獲得数を増やしたいのか、それとも、自社との本格的な協業の布石としたいのかなど、どのような狙いを持っているのかを把握しておく。
最後が、協業を行うに足る最低限のビジネスマナーやスキルを満たしているかどうかを見極めることだ。
協賛を持ちかけるにあたり、NPO側が提案先企業のミッションやビジョン、組織体制、業績、CSR活動への取り組み実績、これまでの他のNPOとの協業・支援実績などに関する情報を事前に把握して交渉(提案)に臨んでいないようではあれば、協業候補としてはマイナス点だ。
さらに、提案にあたってのアポイントの取り方、当日の服装や身だしなみ、言葉遣い、持参資料のクオリティ、打ち合わせ後のお礼など、基本的なビジネスマナーやスキルを身につけているかどうかもチェックしておこう。
残念ながら、NPOに対して多くを期待できないのが現状であるが、最低限のレベルをクリアしていないと、その後に控えた協業自体がうまくいかないだろう。
一般的にNPOの場合は、提案が自己本位となりがちで、支援を行う企業側の立場にたっていないことが多い。
当然ではあるが、個人ではなく組織としてお金を出す以上、その協業の意義と協業から得られる成果を社内外に説明できなくてはならない。
これらのポイントはイベントに限らず、広くNPOとの協業にも言えることだ。
上から目線でなく、あくまでも対等な目線で、しっかりと協業パートナーの力量を吟味する必要がある。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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