「モノのインターネット」(Internet of things:IoT)はアーリーアダプターだけを対象としたギーク向けのニッチな業界だと考えていた人がいるかもしれない。だがGoogleには、IoTがほどなくして広大かつ巨大な業界に成長するだろうとみなすべき理由が、32億ドルを費やすほどある。
Googleが米国時間1月13日、32億ドルの現金を投じてNestを買収する計画を発表したとき、登場してからまだ日が浅いこの業界にかつてないほど明るいスポットライトが当てられた。Nestはスマートサーモスタットや煙と一酸化炭素の検知器を製造してきた企業だ。
Nestの最高経営責任者(CEO)で「『iPod』の父」と言われるTony Fadell氏は米CNETに対して次のように述べた。「2年前にわれわれが初めて姿を現したとき、人々はサーモスタットを鼻で笑い、コネクテッドホームやモノのインターネットが話題になることすらなかった。われわれはその状況を変えて、最初に頭に浮かぶようなものにした。モノのインターネットについて言えば、われわれはその幕開けにおいて大きな功績を上げたと言える。(Googleと組んで)目指しているのは、その状況をさらにもう一度変えることだ。(Googleは)『これらの製品を信じている』と言ってくれる大企業であり、われわれは同社のさらなる成功を手助けしたいと思う」
Nestはこの数か月間、かなり大規模なベンチャーファンディングを探していると言われていたが、Googleの提案の範囲と規模のおかげで、ベンチャーキャピタルとは付き合わないという決断を下した。今回の買収で(少なくともNestにとって)最も重要な要因は、Nestの大幅な独立運営をGoogleが認めたこと(「NestはNestであり続ける」というわけだ)と、Nestのユーザーのデータには手を出さないとGoogleが約束したことかもしれない。
この買収は概して好意的に受け止められている。Forrester ResearchのアナリストFrank Gillett氏のように、短期的に見ればGoogleはお金を払いすぎたかもしれないが、「長期的には、うまく事を運べば賢明な選択だとみなされる可能性がある。この買収は、Googleがコネクテッドホーム向けのオンラインサービスプラットフォームを構築する経験を積むためのものだ。それによって、Nest製以外のサードパーティー製品も数多くサポートできるようになるだろう」と考える人もいる。
Googleがコネクテッドホーム分野に進出することで、Nestはより小規模な既存の競合をいくつか排除したり、現在は他社が支配している新しい製品カテゴリに、今までよりはるかに短期間で手を広げたりするためのリソースを得られる可能性が高い。しかし、そのことを懸念する声は初期の段階においてはあまり多くないようだ。Nestの競合となり得る数社はむしろ、今回のニュースに熱烈な反応を示しているように思える。
その理由として考えられるのは、Googleはこれまで、買収した企業が既存の競合に対して、短期間のうちに不当に有利な立場を得ないようにしてきたことではないかとJason Johnson氏は言う。Johnson氏はスマートロックの開発企業AugustのCEOだ。
「Googleによって、こうした種類の技術が単なる一時的な成功に終わらず、コネクテッドデバイス、特に以前は接続機能がなかった日常的な機器が普及するという、ある程度の確信がもたらされるように思える。成長が見込まれるのはこうした市場だけだろう」(Johnson氏)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス