CNET Japan Live 2013

「マーケターは経営を担うポジションに」--CEOになり得るCMOが備えるべき資質

 12月10日に開催されたイベント「CNET Japan Live 2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」で企業のマーケティング戦略に関わっているルグラン代表取締役で共同最高経営責任者(CEO)の泉浩人氏が、「ビッグデータ時代に生き残るマーケターの条件とは?」と題して講演した。泉氏は、ビッグデータを顧客理解のために活用し、ビジネス全体を俯瞰するのが現代のマーケターの役割であるとし「今こそマーケターはオーケストラの指揮台に上がる時が来ている」と会場に詰めかけたマーケターらを激励した。

ソーシャルでデータの「可視化」と「可逆化」が可能に

 講演の冒頭で泉氏は、邦訳されたビジネス書の表紙にある文言を取り上げた。『データサイエンティストに学ぶ「分析力」』と題され、副題が「ビッグデータからビジネスチャンスをつかむ」となっている同書は、あたかもビッグデータについて語られていると思われがちだ。

 だが、原著のタイトルは『Sexy Little Numbers』、副題は「How to Grow Your Business Using the Data You Already Have」となっており、実際には“小さな数”をテーマに“手元にあるデータでどうビジネスを成長させるか”にフォーカスしたものだ。


ルグラン 代表取締役 共同CEO 泉浩人氏

 こうした海外との取り上げ方の違いや温度差から「こうしないと売れないという出版社の判断もあるかもしれないが」とフォローしつつも、日本では「ビッグデータが何かしてくれるんじゃないか、という浮き足だった感、地に足が付いていない感」が見えるという。

 しかし、これは読者である日本の多くのマーケター自身がビッグではないデータの話よりも“ビッグデータで何かをしたい、何かができると期待している”ところがあるからだろうと泉氏は語った。同書の表紙には「日本ではビッグデータを取り巻く環境にバブル感、高揚感が出ている」こと、マーケターの意識、温度感そのものを表していることについて自覚を促した。

 それを踏まえてマーケターにとっての「ビッグデータ時代」とは、「消費者が『不特定多数』ではなくなる時代」だと泉氏は断言する。

 ネットがあまり普及していなかった時代のオフライン広告では、誰に向けて広告しているのか、広告のメッセージは誰に受け止められ、その結果どういう反応が起こったのか、確かめる術がなかった。したがって、その時代の広告は“匿名の不特定多数”をターゲットにしかできなかったということができる。

 ここで泉氏は、Duncan Watts氏の著書である『Six Degrees』(日本語訳は『スモールワールド・ネットワーク』)を紹介した。知り合いを6人隔てると世界中の人に行き当たるという“6次の隔たり”をテーマにしたものだが、これはネットとは関係なく、かつて手紙で検証されたことがあり、特に目新しいものではない。

 だが、ネットによって“6次の隔たり”は簡単に検証できるようになったと著者は語っており、ソーシャル時代がマーケターにとって何を意味するのかという問いに対しては「可視化」、つまり人々の心や言動が見えるようになったことだとしている。たとえば昔からあったクチコミも、つい最近まで目には見えないものだったが、SNSの普及と活用で見ることができるようになったと泉氏は指摘した。

 現在は「可逆化」も実現しており、リアルタイムの情報だけでなくデータとして蓄積されている過去をさかのぼり、「あの時みんなはなんて言ってたの?」ということまでわかる時代にもなっているという。著者はこういった過去のデータもうまく使うことで、マーケターはさまざまな活動ができるのではないか、と述べている。

 これに関する身近な例として、泉氏は2011年のAKB総選挙を挙げた。当時は人気の高かった2人が1位争いをしており、その前後のソーシャルサービスにおけるファンの言動などをデータ分析することで、選挙前の状況や趨勢、結果がファンに与えた影響まで詳細に調べることができる。

 今になって、その当時考えていたことをファンの人たちに聞くとしても、手間がかかる上に2年前のことは覚えていないという人も多い。データを使えばいくらでもさかのぼって、過去の出来事を知ることができるのが、ビッグデータ以前と以後の大きな違いだと語った。

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