2011年6月のインドネシア進出を皮切りに、東南アジア市場への開拓を推し進めてきたアドネットワーク大手のマイクロアド。同社の代表取締役である渡辺健太郎氏に、東南アジアの統括拠点であるシンガポールオフィスで、その歩みと今後の展望について話を聞いた。
マイクロアドは、サイバーエージェントの新規事業として2004年5月に始動し、2007年7月にマイクロアドとして分社化。創業当時はアドネットワーク事業をメインに行ってきたが、2011年6月にオンライン広告をリアルタイムに入札できる広告配信サービス「MicroAd BLADE」を開始し急成長した。
同社の主力製品は3つ。前出のMicroAd BLADEは、広告主向けの製品で独自のアルゴリズムによって広告出稿を最適化する。ブラウザから趣味嗜好などのオーディエンスデータを取得・解析し、自ら学習するシステムの性能などが広告主6000社の導入につながり、日本ではトップシェアとなった。
媒体者の広告収益を最適化する製品(SSP)である「MicroAd AdFunnel」が持つ広告配信規模は、日本国内でGoogleに次いでいる。市場では前出の広告主向けの製品と両方を取り扱う競合は少なく、それも同社の特徴のひとつとなっている。このほか、オーディエンスデータを蓄積、解析する「MicroAd PIXEL」もある。
このうち日本以外の拠点である中国、東南アジア、インドで展開しているのはMicroAd BLADE。これまでに、中国、香港、台湾、インドネシア、シンガポール、ベトナム、インドの海外7カ国に11のオフィスを構え、各国の言語、通貨に対応。アジア太平洋地域全体で500社以上の企業に導入されてきた。
東南アジアの初進出となったのは、2011年6月のインドネシア。渡辺氏が社員旅行でバリを訪れた際に、単独でジャカルタに立ち寄ったことがきっかけとなった。「当時のインドネシアは、1999年のネットバブルの雰囲気が漂っていた。インターネットはすでに普及しているが、ウェブサービスがない。しかし、現地にいた20代の優秀な経営者と接する中で、ウェブサービスが続々と立ち上がってくるのは時間の問題だろうと、国のポテンシャルを感じた」と語る。
さらに、同国ではネット広告はマーケティングの手段として存在していたものの、テレビCMや屋外広告などのマス広告が主流で、ネット広告市場はこれから出来てくるフェーズだったこともあり、渡辺氏は進出を即決。設立した合弁会社は現在40人弱の規模にまで拡大し、同国に進出する日系企業のみならず、銀行など現地の企業も顧客として抱えている。今では企業がネットプロモーション施策を検討する際の候補のひとつに同社が挙がるほど存在感を示しているという。
次に進出したのが、2012年11月のベトナム。人口が8700万人以上と多く、人口ピラミッドの構成からしてネットとの親和性の高い若年層が多いことから進出を決めた。同国ではMicroAd BLADEの事業にフォーカスしており、これまでに約200社が導入している。同事業を域内の国別で比較するとベトナムが最も伸びているそうだ。その背景には、企業の広告予算のうちネット広告の占める割合が高いこと。また、新しいものに対する好奇心が強い国民性があると渡辺氏は見ている。
その次に進出したのが、2012年12月のインド。ネットの普及率はまだまだ低いとはいえ、こちらも人口が12億人以上と多いことから進出を決めた。海外開拓の早期にインドを選んだもうひとつの理由として、渡辺氏は「アジア太平洋地域全体で考えるとハードルが高い国なので、先にやっておいた方が楽だと思ったため」と当時を振り返る。
その頃、インドはすでに欧米のVC(ベンチャーキャピタル)が進出しており、現地のネット企業にすでに資金が流入し始めていた。また、Eコマースビジネスも盛んだった。こうした状況から、「アドネットワークはすでに浸透し、次はDSP(MicroAd BLADEのようなオンライン広告をリアルタイムに入札できる広告配信サービス)の時代がくる」(同氏)と感じ、同国でもMicroAd BLADEの事業にフォーカスすることにしたと話す。
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