AppleのA7がプログラマーの興味を引くかもしれないもっと短期的な理由は、64ビットであるという性質とは関係がない。ARMv8アーキテクチャ自体がいくつかの真の利点をもたらすのである。
その利点の1つは、より多くのレジスタを利用できることだ。レジスタとはチップ上の小さなストレージ領域のことで、プロセッサはそこに保存したデータに極めて高速にアクセスできる。ARMv8では、汎用レジスタの数が従来の16から31へとほぼ倍増している。つまりA7はメモリへのスワップインやメモリからのスワップアウトに、これまでのように多くのサイクルを浪費しなくてもよくなった。
AMDは「x86」での64ビットコンピューティングの先駆者となったとき(Intelが「Itanium」に気を取られている間にAMDはx86で64ビットへの移行を推し進めた)、レジスタ数の増加によって大幅な速度向上を実現した。しかし、32ビットのx86チップのレジスタ数は4に留まっていたが、32ビットのARMチップのレジスタ数はそれよりも豊富な16である。つまり、ARMの64ビットへの移行では、パフォーマンスはそれほど劇的には向上しないかもしれない。
ARMv8には、ほかにも重要な変更がいくつか施されている。ARMv8は演算能力、とりわけ大量のデータに同じ演算を行うときの能力が大幅に向上している。また暗号処理機能も内蔵されており、これによって多くのセキュアな通信を高速化でき、バッテリ消費も低減するはずだ。
Appleが「Mac」シリーズを「PowerPC」プロセッサからIntelプロセッサに移行させたとき、世界は驚いた。そして同社はMacをARMチップに移行させるのではないか、あるいは少なくとも一部で採用するのではないかといううわさが流れている。
A7プロセッサや、うわさになっているよりハイエンドな「A7X」チップは、本格的なPCを快適に動かすだけの性能は備えていないかもしれないが、Schiller氏はA7が「デスクトップクラスのアーキテクチャ」を備えているとはっきり豪語した。そして、たとえARMベースのMacが1つも発表されなかったとしても、AppleがiOSをよりノートブック的なものに変える可能性は依然として残る。Appleは、新しいiOSデバイスで「iWork」および「iPhoto」や「iMovie」を無料で提供すると発表している。消費者がiOSデバイスでコンテンツの消費だけでなく作成も行う、という概念を同社が気に入っていることは明白だ。
AppleがARMベースのコンピュータを構築する道を選んだ場合、4Gバイト以上のメモリを利用できることは非常に有益だ。したがって、付随するOSとアプリコレクションを持つ成熟した64ビットARMチップ設計を有していることは、大きな資産になる。
ARMベースのApple製コンピュータが登場すれば、本当に劇的な変化になるだろう。IntelはARMに対抗するため、x86チップの電力消費量の低減に必死で取り組んでいる。そしてARMベースのApple製コンピュータは、x86ベースのマシン向けに開発されたMacソフトウェアの実行に相当苦労するだろう。
Schiller氏が64ビットのA7に熱意を抱いているのは、それが効果的な宣伝文句になるからであり、われわれがそれ以外の理由を考え出す必要はない。64ビットのA7は、進化しているような印象を与え、ライバルのAndroidスマートフォンには搭載されていないことを容易に確認できるものだ。
しかし、今のところは概ねiPhoneの宣伝文句に使われているにすぎないとしても、Appleが64ビットのARMv8設計に移行したことは、長期的に見て理にかなっている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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