Appleにとって、米国時間9月10日はちょっとしたタイムワープのようなものになるだろう。
2011年10月まで時をさかのぼってみよう。Appleは同社本社に報道各社を招待し、前年に投入した同社ヒットスマートフォンの改良版を披露した。同じことが10日のイベントで起こると予想されている。同イベントでは、Appleが「iPhone 5S」を発表することに注目が集まっており、同デバイスは、2012年登場の「iPhone 5」の改良版である。
今回における大きな違いは、Appleが新しい領域に踏み込み、全く新しいモデルをiPhoneファミリに加えることが予想されていることだ。同モデルは、仕様上は驚くべきものはないが、価格において、Appleの新モバイルデバイスとしてはかつてない低さになるよう開発されている。
そのデバイスは、名称が「iPhone 5C」となると予想され、この数カ月に無数のリーク情報で取り上げられているが、iPhoneにおける新しい章の始まりを示してもいる。Appleは、1年に1種類のモデルを投入することで大きな成功を収めてきたが、この戦略に終止符を打つ時がついに来るようだ。
典型的な例として「iPod」がある。Appleは、製品ライン拡大を初代機発表の2001年から3年後の「iPod mini」で、そして、2005年の「iPod shuffle」で実行している。「iPad」の場合も同様だ。iPadは、初登場から2年後に小型版が発売されており、最近の報道では、より大きなモデルへの将来的な拡大すら予想されている。これらの事例はいずれも、売り上げの増加という結果につながっている。
iPodやiPadにおいて、より小型で低価格のモデルには競合他社から身を守るという目的もあった。それらの企業は、より多くの種類の製品を投入することでAppleの成長を損なう恐れがあった。iPhoneの場合、遅れが長く続いている理由は単純だ。Appleは、過去に発売した2モデルについて、値段を下げつつも、生産と販売を継続したからだ。この戦略は、同社が自社のコンピュータで採用したのとは異なっており、旧型製品をためらうことなく切り捨てることで知られるテクノロジ企業としては幾分不可解とも思える。しかし、多くの顧客が複数年契約付きで携帯電話を購入しており、それによって支払いが容易になっている場合、不可欠だ。
また、最新の最上位モデルを持つことに必ずしもこだわりがない人々に対する売り上げを伸ばすことでも役立っている。この戦略は、中国のような国で機能しており、Appleは、同国において旧型製品の売り上げが好調であることを確認している。そして、これは、同国最大のキャリアで取り扱いがないにもかかわらずである(これについては、今週にも状況が変わると予想されている)。
Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は4月、「スマートフォンを新規に購入すると見込まれる顧客が中国には非常に多数おり、われわれはその意味を理解している」とウォール街のアナリストに対して述べている。「同国ではiPhone 4への関心が高く、これら新規購入者にとってより魅力的になるよう、同端末は最近、さらに購入しやすい価格になっている。これによりiPhone販売が後押しされることを期待している」(Cook氏)
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