マイクロソフトが「Kinect」で描くUIの未来像--超えるべき課題は?

 ゲームで培った技術やメカニズムを他分野で活用する「ゲーミフィケーション」の流れは、テレビ周りなどにおける優れたユーザーインターフェイス(UI)の開発という面においても見られるようになってきた。

 たとえばPlayStation 3用のテレビ視聴・録画アプリ「torne(トルネ)」。EPGでのチャンネル変更時などにおけるカーソルの高速移動は、それまでゲームを中心に担当してきた開発者自身が「(テレビの)カーソル移動のもっさり感にはウンザリしていた」としてこだわった点だという。操作性が悪いと“クソゲー”扱いされがちなゲーム業界において、他分野でも通用する優れたUIが生まれてくるのは当然の成り行きなのかもしれない。

  • 「Kinect」

 さて、現在ゲーム発でさまざまな分野に進出しようとしているのが、マイクロソフトが開発したNUI(ナチュラルユーザインターフェイス)の「Kinect」である。Xbox 360用に登場したジェスチャー・音声認識で操作ができるデバイスで、次世代機のXbox Oneには再設計されたバージョンが標準搭載されるほか、Windowsベースで利用できるバージョンはさまざまな分野で研究開発が進んでいる。

 もともとXbox向けに開発されたこともあり、テレビ周りの操作は初期段階で可能となっていた。「ふとした時にリモコン代わりに利用できるため、リモコンを探す手間が省けるなどの理由から、ユーザーの間では頻繁に使われていると聞いている」(日本マイクロソフト インタラクティブ・エンターテイメント・ビジネス デベロッパーネットワークグループ リサーチ&インテグレーション ソフトウェアデベロップメントエンジニア・千葉慎二氏)。

 こうした背景から、将来はさまざまな場面での活用が期待されているが、実際には超えるべきハードルがなかなかに高い。1月、NUIに関する会見の場で「Kinect for Windows」のさまざまな活用例が示されたが、その際、事例をみたり実際に操作してみたりして感じたのは「使いこなすには習熟が必要」ということだった。

 たとえば医療現場では接触なしで表示画面を動かせるデバイスとして有効活用されているとのことだったが、裏を返せば「専門性の高い分野が必要に応じて操作をマスターする」という前提が必要となり、家庭での利用シーンには当てはまらない。また大きく動くことのできない重度障害者の細かな仕草を読み取って操作する研究も素晴らしいものではあったが、あまりに敏感に反応されるとすべての人にとって使い勝手のよいものとは言えない。

課題は「手ごたえ」と「反応速度」

 では、Kinectが家庭での主たるUIになるためにクリアすべき課題とはなにか。千葉氏が「根本にあるのは、キーボードやマウス、ゲームコントローラなどに慣れていない人でも、PCに触れ合い、その恩恵を受けて欲しいという考え」というように、まずは原点である使いやすさを追求していくことにあると思う。

 個人的に感じた使いにくさの要因としては、まず「操作に対する手ごたえがない」ことだ。これは、自分の要求したとおりに動かない、あるいは誤操作が発動するケースで強く感じられたことで、リモコンボタンのような手の感触も残らないだけに、ストレスとともに「きちんと入力できたかどうか」という不安も感じてしまう。

 現状はテレビ画面やPCディスプレイなどに操作状況を表示し、視覚的にフィードバックを返すというのが全般的な対策。ユーザー側に一定の安心感は与えられるが、手ごたえという意味では物足りない。

 「検討しているのは音声によるフィードバック。Kinectのセンサでユーザーの位置・距離は特定できているため、指向性の高いスピーカを使って本人にだけ音声反応を返すことも可能」と千葉氏。もちろん、ベストな対策は何らかの形で触覚に訴えることだが「体になにかを装着し、それを振動させるというのはNUIの定義に反する」(同)とのことで、それを採り入れるためには装置の装着や接触なしで触覚を与える技術の登場を待つしかない。

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