もうひとつ、反応速度にも難点がある。入力してすぐに動かないと、余分な連続入力を招くことになり誤操作も起こりがちだ。しかし、通信を介することに加えて入力動作・音声の解析や処理、ディスプレイへの表示描画などさまざまな作業が存在することを考えれば、将来のハードウェア性能の向上だけでは解消しきれない面も出てくるだろう。
その対策として千葉氏が掲げたのが「学習と予測」だ。「たとえばテレビのチャンネルを変更する際、コンピュータがあらかじめ『そろそろチャンネルを変えるだろう』とか『変えるとしたらこの番組』と予測できていれば、内部の処理時間は前倒しして短縮できる。記憶と学習はコンピュータの得意とするところであり、『人とコンピュータとの対話』という目指すべき方向性とも合致する」(同)。
音声での応答やこちらの行動を予測した反応など、まるで意思をもった自動車やヘリコプターが活躍する一昔前の海外ドラマのような世界だが、単なる操作デバイスにとどまらず、目的を「コンピュータとの対話」に定めているところはマイクロソフトらしくもあり、また将来に向けた可能性を感じさせる。
マイクロソフト担当者への取材後、千葉県某所にあるKinectの実験住宅「次世代スマート2×4」を見学させてもらった(三井ホームが整備、実験中)。ここではテレビの操作に加えて、室内照明のオン・オフや窓やカーテンの開閉、扇風機や自動掃除機の起動からお風呂の湯張りまでを、テレビ上のセンサに向かってジェスチャー・音声で指示することができる。現時点における最先端のKinect利用研究のひとつだ。
実際に体験させてもらうと、やはり操作に習熟が必要なのは間違いないが、室内照明や窓・カーテン、各種家庭用家電の起動といった指示は思いのほかスムーズにできた。むしろ、もっとも苦労したのがテレビ関連で、ジェスチャーでは1つずつしかチャンネル送りや音量調整ができず、またテレビ自身が音を発しているため音声認識も対応力が落ちる。「オン・オフといった単純操作のほうが威力を発揮できる印象」とは三井ホーム担当者の弁で、すでにUIとして高い完成度をほこるテレビリモコンを超えるのは至難の業なのかもしれない。
いずれにせよ、Kinectが描くNUI、そして「人とコンピュータとの対話」という将来像への挑戦はまだ始まったばかりだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境