かつて日本は「ものづくり」大国と言われ、現在もなお世界に誇る優れた技術が眠っている。またデザインの進化も著しい。こうしたピースは揃っているが、必ずしも結実してヒット商品が生まれるとは限らないのも、ものづくりの難しいところだ。
こうした難しさにチャレンジしているのがニューヨークにあるQuirkyだ。さまざまなアイデア商品を自社ブランドで世の中に送り出しているが、これらはすべて、Quirkyのコミュニティに参加している一般の人のアイデアによって作り出された製品だ。ものづくりをプラットホーム化し、誰もがアイデア1つでヒット商品を生み出せるイノベーションを仕組みが回り続けている現場を取材した。
ニューヨーク・マンハッタンの西岸の繁華街から外れたエリアのビルにQuirkyのオフィスがある。中に入ると周囲の街のやや寂れた雰囲気は一変し、木目調の床とレンガの壁の暖かみあふれる空間が現れる。出迎えてくれたJaime Yandolinoさんがオフィスをぐるりと一周するが、ツアーだけでも20~30分はかかってしまうほどの広大なオフィスである。
オフィス──とはいっても、通常の職場とはまったく雰囲気が違っていた。入ってすぐの場所には、Quirkyで製品化された多様な商品群が並んでいる。たとえば、机の上などでケーブルを整理するためのラバー製のホルダや、芋虫のようにくねくね曲がげられて机の脚に固定したり隣と干渉が防げるACアダプタ、レモンに直接突き刺して中の果汁をスプレーにできるキッチン用品など、「今までなかったけれど、あるととても便利」と直感的に思える製品がそろっている。
さらにツアーは続く。すぐ奥には、日本でもよく見るような、島式のオフィスが広がり、仕事を進める風景が見られる。そのオフィスの奥には青い大きなボードがあり、開発される商品のプロジェクトが貼り付けられていた。一般的な企業であればここでオフィスツアーは終わりだが、Quikryの場合、ここでまだ半分だった。
オフィスエリアを抜けると、日本でも話題になっている3Dプリンタが10台あまり並ぶ部屋、出来上がったモデルを塗装する部屋、やすりやカッターなどで造型を行う部屋が続く。先ほどまでのオフィスとは別世界のクリエイティブなエリアで、機械や工具などがここまでそろっていると、不器用ながらも図工の授業が好きだった筆者としてもワクワクしてくる。
さらに、クリエイティブエリアを抜けると、今度はさまざまなシーンのエリアへと入る。キッチン、バス、トイレ、オフィスといったわれわれの生活習慣が再現されたスペースが現れ、フォトスタジオまである。どこも、非常に洗練された空間ながら、わざと生活臭を漂わせるかのように、野菜や果物といった食材が置いてあったり、シャンプーのビンなどが並んでいたりする。
このオフィスではいったい何が起きているのだろう。
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