パイオニアが独自の渋滞情報「スマートループ」の提供を開始したのが2006年。それから約7年をかけて蓄積した渋滞情報は、2013年「スマートループアイ」という新データを加え、より精度の高い渋滞情報へと進化した。渋滞のデータを集め、分析し、提供する。その裏にはどんな仕組みがあり、どうデータは活用されているのか。カーエレクトロニクス事業統括部カー事業戦略部情報サービスプラットフォームセンタープラットフォーム開発部研究開発課データサイエンティストの鎌田喬浩氏に話しを聞いた。
パイオニアが独自に提供する渋滞情報がスマートループです。ベースは「カロッツェリア」の対応カーナビゲーションユーザーが走った軌跡から渋滞情報を生成しており、一般財団法人道路交通情報通信システムセンターが提供する渋滞情報「VICS」に比べ、より多くの道路をカバーしていること、情報の種類が多いことが特徴です。
具体的には、走行履歴がわかるリアルタイムプローブ情報と、停車位置や目的地などさらに細かい情報が取れる蓄積型プローブ情報の2つを扱っています。リアルタイムプローブ情報はカーナビに搭載されている通信機器から数秒に一度の割合で、蓄積型は地図更新やデータの出し入れをした時にPCやSDカードなどを通じて、パイオニアのデータセンターに情報が集まる仕組みです。
日本には200万km程度の道路があり、そのうちナビが誘導できる道路は70万km程度と言われています。VICSはそのうちの7万km程度が情報提供対象になっていますが、我々は70万kmすべての道路情報を提供対象にしています。ユーザーが走った道路はすべて情報として吸い上げられますので、抜け道や地元の人しか知らないような道であっても、渋滞情報が入手できるのです。
渋滞情報は基本的にリアルタイムプローブ情報を用いて提供していますが、通信できない場合は蓄積型プローブ情報内の統計情報を提供することで、渋滞情報がわかるようになっています。
これは日時や時間帯から渋滞情報を推測して、ユーザーに届ける方法で、通信機能を備えていないカーナビでもスマートループの情報の一部が入手できます。統計情報は地図更新する際に、常に最新の情報に書き換えられますので、実は地図とともに渋滞情報も新しくなっているのです。
スマートループアイは、カーナビにカメラがついたことで実現した最新機能です。サイバーナビでは2011年から「クルーズスカウターユニット」を導入しました。これはカーナビの一部として車にカメラを取り付けることで、実写映像に地図情報を乗せてナビを利用できるものです。
スマートループアイ搭載ナビで走行すると、我々が指定した「スマートループアイスポット」で自動的にカメラが道路の状態を撮影、その画像データは我々のサーバに送られ、車のナンバーを消すなどの画像処理をした上で、ほかのドライバーに配信されます。この画像を見ることによって、道路の状況が一目で把握できます。
渋滞は基本的に車が混み合っていることを指す言葉で、今までは車の平均速度から計算していました。速度が遅くなると車が混んでいると認識するのです。そこにカメラという“目”をつけることで、前の車との距離が見えるようになりました。この車間距離がわかることで、より詳細な渋滞情報が得られるようになったのです。
車間情報は大変膨大な量になるため、2012年までは蓄積型プローブ情報でしか集められませんでした。それをカメラで撮影することによって、リアルタイムプローブ情報として扱えるようになりました。
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